2017年度 日本国内の自然エネルギーの割合

2018年11月20日

日本国内でも太陽光発電を中心に変動する自然エネルギーの割合が地域によっては急速に増加しつつあります。2017年末の時点で日本では約5,000万kW(パネル容量DCベース)に達していますが[1]、系統接続の容量(ACベース)ではFIT制度による導入状況から約4,300万kWとなっています[2]。2017年度に日本は、中国に次ぐ世界第二位の太陽光発電の導入量になっています。

[1] REN21 “Renewables 2018 Global Status Report“ [2] 資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公表用ウェブサイト

それでは、導入された自然エネルギーの発電設備による「発電量」はどのくらいになっているのでしょうか。私たちが使う電気として、電力需給の中で自然エネルギーの割合はどの程度になっているのでしょうか。自然エネルギー100%へ向かう中で、日本はどこまで来ているのか確認してみたいと思います。本稿では、日本国内で自然エネルギーの普及状況について、発電と送配電それぞれの段階に注目して2017年度の最新データについて紹介します。

発電量に占める自然エネルギーの割合

まず、日本全体として発電された発電量に対して自然エネルギーによる発電量の割合はどの程度だったでしょうか?資源エネルギー庁が公表している電力調査統計(一定規模以上の電気事業者のデータを調査し、自家発電の自家消費の発電量などを含む)などを集計することで、日本国内の年間発電量に対する自然エネルギーの割合を推計することができます。

ただし、電力調査統計は電力自由化の影響で2016年度以降の統計データの集計方法が大幅に見直されており、現状では風力発電のデータに一部不整合があると考えられるため、後述する電力会社エリア毎の電力需給データを使っています。

図1. 日本国内での自然エネルギーおよび原子力の発電量の割合のトレンド|出所:資源エネルギー庁の電力調査統計などからISEP作成

図1に示す通り、2017年度の自然エネルギーによる発電量の割合は15.6%となりました[3]。2012年度には約10%だったので、5年間で約1.5倍以上になりましたが、2017年度は前年度から0.8ポイント増えました。最も増加した自然エネルギーは、やはり太陽光発電で5.5%と前年度の4.8%から0.7ポイント増えています。

[3] ISEP「データで見る日本の自然エネルギーの現状(2017年度電力編)

その他、全体の発電量は前年度からわずかに増加しており、太陽光以外の自然エネルギー(風力、地熱、バイオマス)がほとんど増えていない状況です。その結果、太陽光がいまや水力(大規模なものを含む)の7.5%に次ぐ発電量になっています。

風力は、多くの国で太陽光よりも普及が進んでいますが、日本ではようやく0.6%に達し、太陽光発電の発電量の約9分の1にとどまっています。月別にみると2017年5月の自然エネルギーの割合が最も高く、21.8%に達しており、水力が10.8%、太陽光が8.3%にまでなっています(図2)。

図2. 月別の自然エネルギー発電量の比率の推移(2017年)|出所:資源エネルギー庁の電力調査統計などからISEP作成

電力需給に占める自然エネルギーの割合

2016年度より一般送配電事業者から法令に基づき電力会社エリア毎の電力需給の実績データ(電源種別、1時間値)[4]が公開されています。

[4] 電力広域的運営推進機関(OCCTO)系統情報サービス「需給関連情報・供給区域別の供給実績

このデータに基づき日本国内での系統電力需要に対する自然エネルギーの割合が2016年度から算定できるようになりました。2017年度の日本全体の電力需要に対する自然エネルギーの割合は平均で15.6%となりました(図3)。

図3. 電力会社エリア別の自然エネルギー系統供給率の割合(2017年度)|出所:各電力会社の電力需給データよりISEP作成

月別の平均値では、2017年5月が21.5%と最も高くなっていますが、1日の平均では2018年3月25日に26.2%に達しました。1時間値でも3月25日12時台の54.2%が最高で、太陽光が41.1%に達しています。

電力会社(一般送配電事業者)のエリア別では、2017年度の電力需要に対する自然エネルギーの割合の平均値が最も高かったのは北陸電力エリアの32.4%でした。この中で水力発電が28.7%と大きな割合を占めています。

東北電力エリアでも自然エネルギーの割合が27.2%となり、水力発電の割合が16.2%と大きくなっていますが、太陽光が5.0%になる一方で、風力の割合も2.7%と比較的高くなっています。

さらに、北海道電力エリアでは太陽光の4.2%に対して、風力の割合が全国的にも最も高く2.9%に達しています。

東日本全体の平均では自然エネルギーの割合が14.4%と全国平均を下回っていますが、東京電力エリアが9.9%に留まっていることが大きな要因となっており、太陽光が4.9%と水力の4.5%を上回っているという特徴があります。

一方、中西日本では四国電力エリアの自然エネルギーの割合が最も高く22.1%に達しており、水力11.6%に対して太陽光9.0%となっています。太陽光の割合が全国でも最も高いエリアになっている九州電力では自然エネルギーの割合は18.4%ですが、水力5.8%に対して太陽光が10.4%に達しています。変動する自然エネルギー(VRE)の割合も風力と合わせて11.0%と全国で最高です。

中西日本全体では、自然エネルギーの割合は16.6%となっており東日本よりも高く、VREの割合も6.8%と東日本の5.9%より高くなっています。

こうした電力会社エリア毎の電力需給の実績データについては、環境エネルギー政策研究所が提供する「ISEP Energy Chart」上で、グラフに可視化したり、詳細データを分析することができます。

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新エネルギー新聞2018年10月1日付より改稿

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千葉県出身。環境エネルギー政策研究所理事/主席研究員。工学博士。東京工業大学においてエネルギー変換工学を研究し、学位取得後、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や長期シナリオ(2050年自然エネルギービジョン)の研究などに取り組みながら、自然エネルギー白書の編纂をおこなう。自然エネルギー普及のため、グリーン電力証書およびグリーン熱証書の事業化、市民出資事業や地域主導型の地域エネルギー事業の支援などにも取り組む。

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