世界の太陽光と風力発電の最新トレンド(2020年)

2021年5月20日

2020年は、新型コロナウィルスの影響で世界全体の経済活動が停滞し、一時的に化石燃料の消費量が減少することでエネルギー起源のCO2排出量は約6%減少した。世界的にコロナ後の回復(リカバリー)の過程において積極的にエネルギーの効率化や自然エネルギーを取り入れた「グリーン・リカバリー」が提唱されているが、IEAの最新レポートでは2021年については5%程度リバウドしてCO2排出量は増加することが予測されている[1]

[1] IEA “Global Energy Review 2021” https://www.iea.org/reports/global-energy-review-2021

その中で、2020年の世界の自然エネルギーの発電電力量は前年から7%増加した。その結果、2020年の世界全体の発電電力量に占める自然エネルギーの割合は29%となり、前年の27%から増加しており、2021年には自然エネルギーの割合は30%を超えると予測されている。

コロナ禍でも世界中で自然エネルギーが急成長するなか、すでに主力電源となっている水力発電や風力発電に続き、太陽光発電の導入が世界各国でさらに進んで主力電源となりつつある。

IRENAでは世界各国の自然エネルギー発電設備の過去10年間のトレンドをまとめたレポートを毎年発行している[2]。2021年4月に公表された最新レポートによると、世界的なコロナ禍の状況にも関わらず世界全体の自然エネルギーによる発電設備は2020年に前年を約50%上回る260GWが新規に導入された[3]。なお、1GWは100万kWで原子力発電1基分の設備容量に相当する。2020年に全世界で新規に導入された発電設備の約80%は自然エネルギーであり、そのうち約9割が太陽光および風力発電だった。

[2] IRENA “Renewable Energy Capacity Statistics 2021” http://www.irena.org/

[3] IRENAプレスリリース” World Adds Record New Renewable Energy Capacity in 2020” http://www.irena.org/

一方で化石燃料による発電設備の年間導入量は60GWまで減少している。その結果、世界全体の自然エネルギーの発電設備の累積導入量は2799GWとなったが、水力発電の設備容量は1211GWに達しており、原子力発電(約400GW)の3倍以上になっている。

IRENAのレポートによると風力発電は2020年の年間導入量が111GWで、前年の58GWから大幅に増加し、累積では700GW以上に達している。太陽光発電も、10年前の2010年には世界全体でわずか40GWだった累積導入量が2020年には127GWが新規に導入され、累積で700GW以上に達し、風力発電と同じレベルの累積導入量に達している。風力と太陽光を合わせた設備容量が2020年末には原子力発電の3倍以上の1500GW近くに達している[4]

[4] 松原弘直「太陽光が風力を超えて2020年は世界で過去最大の導入量に」Energy Democracy https://energy-democracy.jp/3409

太陽光発電

太陽光発電の累積導入量では2015年以降、中国が世界第一位となっており、2018年に国レベルの買取制度が中断したにも関わらず、さらに導入が進んでいる。すでに中国が、世界の太陽光発電の年間導入量の3分の1以上を占め、約49GWを一年間で導入して累積導入量でも世界第1位となっている。その結果、2020年末までに中国は累積導入量250GWを超え、圧倒的な世界第1位となっている(図1)。

図1. 国別の太陽光発電の累積導入量のトレンド(出所:IRENAデータ等よりISEP作成)
図1. 国別の太陽光発電の累積導入量のトレンド(出所:IRENAデータ等よりISEP作成)

米国の累積導入量については、米国太陽光産業協会(SEIA)からの発表では、2020年末には96GW近くに達し、世界第2位となっている[5](IRENAのデータでは約74GW)。これに日本が約67GWで続き第3位となっている。なお、これらの太陽光発電の設備容量のデータは、太陽光パネルの発電出力が基準になっている(DCベース)。一方、日本国内で公表されているFIT制度による導入量は系統接続された出力(ACベース)が基準になっており、DCベースよりも1割程度小さくなるので注意が必要である。

[5] SEIA “U.S. Solar Market Insight” https://www.seia.org/us-solar-market-insight

ドイツは、2014年まで世界1位の累積導入量だったが、2020年末では約54GWで第4位である。累積導入量が10GWを超える国が13カ国(前年は10カ国)あり、インドが約38GW、イタリアが約22GW、オーストリアが約18GW、年間導入量が約12GWで急成長したベトナムが約17GW、韓国が約15GW、英国が約14GW、スペインおよびフランスが約12GW、オランダが約10GWとなっている。世界全体で累積導入量が2GWを超える国は29カ国(前年は26カ国)に上る。その中には欧州で急成長するポーランド(約4GW)、南米のブラジル (約8GW)も含まれている。

太陽光発電の年間導入量でみると日本は前年から若干減少して5.5GWを2020年に新規に導入したが、それに対して米国はその3倍以上の19.2GW、ベトナムは11.6GWを新規に導入している(図2)。その結果、日本は年間導入量では世界第4位だった。

図2. 国別の太陽光発電の導入量(2020年末)トップ20(出所:IRENA,SEIA等データよりISEP作成)
図2. 国別の太陽光発電の導入量(2020年末)トップ20(出所:IRENA,SEIA等データよりISEP作成)

世界全体で年間1GW以上の太陽光を導入している国は17カ国あるが、そのうち6カ国(中国、インド、日本、ベトナム、韓国4.1GW、台湾1.7GW)がアジアである。欧州でも2020年は1GW以上の年間導入量となっている国がドイツ4.7GW、オランダ3.0GW、スペイン2.8GW、ポーランド2.4GW、ウクライナ1.4GW、ベルギー1.0GWと6カ国に増えた。オーストラリアでは4.4GWが新規に導入されており、その結果人口あたりの累積導入量(約700W/人)は世界第一になっている。北米のメキシコ1.2GW、南アフリカ1.1GWでも導入が進んでいる。

風力発電

風力発電市場は2010年以前には欧州の一部の国(ドイツやスペインなど)や米国が牽引していたが、2010年以降は中国が風力発電市場を先導しており、欧州各国(英国、フランス、イタリア、トルコ、スウェーデン、ポーランドなど)や他の新興国(インド、ブラジルなど)でも導入が進んでいる。

中国での風力発電の年間導入量は2014年以降、20GWを超えており、2020年の年間導入量は約49GWだった。世界全体の風力発電の年間導入量約93GWの約5割を中国が占めており、日本国内での年間導入量0.45GWの実に100倍以上に達している。中国は2020年末には累積導入量が約288GWと風力発電が300GWの大台に近づいている。いまや中国は世界一の風力発電の導入国であり、ヨーロッパ全体での累積導入量219Wを大きく上回り、日本国内の累積導入量4.4GWの60倍以上に達している(図3)。

図3. 世界各国の風力発電の累積導入量の推移(出所: GWEC, IRENAのデータよりISEP作成)
図3. 世界各国の風力発電の累積導入量の推移(出所: GWEC, IRENAのデータよりISEP作成)

2020年末の時点で風力発電は中国内の全発電設備容量の約10%に達しており、2020年の風力による年間発電電力量は467TWhで中国全体の年間発電電力量の6.1%に達している[6]。中国では自然エネルギーによる年間発電電力量が2020年に全発電量の28.6%に達し、その中で風力発電は、火力発電や水力発電に次ぐ第三番の電源としての地位を固めて、原子力発電の年間発電電力量の割合4.8%を超えている。

[6] China Energy Portal “2020 electricity & other energy statistics (preliminary)” https://chinaenergyportal.org/en/

近年注目されている洋上風力発電については、2020年に6.1GWが世界全体で新規導入され、風力全体の6.5%になっている。累積導入量では約35GWに達しており、風力全体の4.8%になっている。イギリスでは風力発電の導入が洋上風力を中心に進み、風力発電の累積導入量34GWのうち洋上風力が世界第1位の10.2GW導入されている(図4)。

図4. 洋上風力発電の累積導入量 2020年(出所: GWEC,IRENAのデータよりISEP作成)
図4. 洋上風力発電の累積導入量 2020年(出所: GWEC,IRENAのデータよりISEP作成)

2020年には中国で3.1GWが新規に導入され世界一の洋上風力の市場になっており、累積導入量でも10GWに達している。欧州ではオランダで1.5GWの洋上風車が新規に導入され第2位になり、第3位はベルギーの約0.7GWだった。欧州各国では、イギリス(30%)、オランダ(28%)、ベルギー(33%)、オランダ(28%)、デンマーク(21%)などで洋上風力の割合が累積設備容量の20%を超えている。

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千葉県出身。環境エネルギー政策研究所理事/主席研究員。工学博士。東京工業大学においてエネルギー変換工学を研究し、学位取得後、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や長期シナリオ(2050年自然エネルギービジョン)の研究などに取り組みながら、自然エネルギー白書の編纂をおこなう。自然エネルギー普及のため、グリーン電力証書およびグリーン熱証書の事業化、市民出資事業や地域主導型の地域エネルギー事業の支援などにも取り組む。

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