3月20日、ドイツフライブルグの眺め。湿気によるこの「もや」が太陽光発電に影響を与えていたかもしれません。Craig Morris

日蝕と電力系統:その成功の大きさは?

2015年6月9日

3月20日(金)の日蝕はドイツの電力系統にとって最大の試験となり、電力系統は見事にその試験に合格しました。その成功は今、ドイツが風力発電と太陽光発電へと大幅に移行できる証拠としてもてはやされています。よく見てみると、その出来事はそれほど珍しいことではなかったのかもしれないことが分かります。

金曜日の朝に目を覚ました時、窓の外を素早く見ると良い天気の1日になることが分かりました。

3月20日、ドイツフライブルグの眺め。湿気によるこの「もや」が太陽光発電に影響を与えていたかもしれません。Craig Morris
3月20日、ドイツ・フライブルグの眺め。湿気によるこの「もや」が太陽光発電に影響を与えていたかもしれません。Craig Morris

数分後、朝のニュースの天気予報がその晴天がどれほど広範囲であるかを伝えました。ドイツのほとんどの太陽光発電は南部にあるため、北部にある雲はそれほど問題になりませんでした。

さまざまな研究者が午前10時ごろから約1時間の間に太陽光発電が約9GWから26GWまで上昇するだろうと予測していました。通常の平日に最大で約70GWの需要がある電力系統でこのようなことが起ころうとしていたことに留意してください。たった1時間のうちに、太陽光による発電量の増加が需要電力の1/4に相当していたかもしれないのです。

私たちの予想はかなり当たっていました。以下で使用しているデータは全て当て推測なので完全に一致するわけではありません。しかし正式な数字が発表されれば、どのようなことが見つかるかだいたい分かっています。最大の疑問点は従来型の発電に何が起こったのかということです。

まずは太陽光発電からはじめましょう。幸いなことに、私はこの出来事の間、Badenova社の系統コントロールセンターにいました。その施設はフライブルグ市の地域配電網を運営しています。下の写真は日蝕でもっとも暗い時に撮ったものです。頂点の上にある線は周波数と電圧を表しており、見ての通り夜間は昼間とそれほど変わらず、日蝕の間はさらにその差は縮まっています。

下部にある黄色いエリアは日射量です。興味深いことに、午前9時前に顕著な急落があります。エンジニアが、この減少は太陽が露を蒸発させて発生した朝もやによるものであると教えてくれました。このような影響は風の強い土地に極めて限定的なものであり、このもやはすぐに消散します。しかし、これは負荷プロファイルによるこのような影響を将来実際に考慮する必要があるということを示しています。

国中に保有する自社のインバーターから太陽光発電量を予測するSMA社のウェブサイトでは太陽光発電が5.0GWまで減少し、そして正午までに19.4GWに増加しました。フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所は同じ時間帯で5.4GWから19.6GWに増加しています。アゴラの電力可視化グラフだけは1時間単位での記録でしたが、数値はほぼ一致しています。

つまり太陽光発電量は90分間で14GW(全発電量の約1/5)も増加したのです。しかも停電も起こりませんでした。この点については真に称賛に値します。

しかし他の数値を見ると、この成功がなぜ誇張になる恐れがあったのかすぐに分かります。従来型の発電量について、フラウンホーファーとアゴラの数値によく似た一致があります。フラウンホーファーはその週の合計のピーク発電量を66GW(実際、金曜日の正午に起こりました)のちょうど少し上で見積もっていました。(電力の輸出は従来型発電への需要に結びつきます。余剰負荷の説明参照)アゴラは同様の概算を出しており、Y軸の凡例が積み上がっているため、80か90GWのように見えていますが、ポップアップボックス(マウスをグラフにかざすと表示)で見ると従来型発電量のピークは68GWです。

そして、ここでさらに話はセンセーショナルなものではなくなります。従来型発電所の対応を表した以下の表を見てください。ここではアゴラとフラウンホーファーの間で発電量の差が大きいことは気にせず、相対的な変動に着目してください。

アゴラ フラウンホーファー
午前9時 70 GW 52.1 GW
午前10時 72.6 GW 53.7 GW
午前11時 68.5 GW 50.9 GW
正午12時 64 GW 47.6 GW

日射量が最低値に達したのは午前10時30分直前だったため、アゴラの時間精度が粗いのは運が悪かったかもしれません。その一方で、フラウンホーファーでは実際には従来型の発電量が、太陽が消えていた午前10時から10時30分の間に減少しています。この一見したところの矛盾は備えによる結果(電力消費量に普通の日には想定されないような全体的な急落が起こっています)なのかもしれません。これから数週間、より納得のいく説明を提供するためにより徹底した調査をしたいと思います。

いずれにせよ、2時間以内の従来型発電量の減少はフラウンホーファーが6.1GWであるのに対し、アゴラでは8.6GWの減少となっています(日蝕がもっとも進んだ部分にある輸出電力量のわずかな変動に注目)。

Fraunhofer ISE
Fraunhofer ISE

では、ドイツの電力群にとって2時間で約6〜8GWという急減はどの程度の大きさなのでしょうか?3月16日月曜日の午前9時から11時を見てみると、従来型の発電量は44.5GWから40.4GWに下落しており、約4GW(日蝕による最大予測値の約半分)減少していました。他の数値にマウスを重ねてみると、2時間で数GW程度(8GWではないものの)の変動は日常的に起こっていることがわかります。つまり、今回の日蝕ではドイツの従来型発電施設が通常の2倍の速さで出力を減らしていたことになります。ただし、ここで見ているのはたった1週間です。1年間全体を見れば、8GW にきわめて近い増減が見つかるかもしれません。

さらに、今回の変動が発電量の比較的高いレベルで起こったということは、反応していた従来型の発電設備はある程度融通が利くことを意味しています。風力発電(フラウンホーファーのグラフの緑色部分)は日蝕の間、事実上消えています。もし金曜日の日蝕の間の風力発電がごくわずかな0.5GWではなく、月曜日のように15GW近くであれば従来型発電量は40GW(ドイツの電力群がまだ上昇できるレベル)近くに押し下げられたでしょう – 数値が低くなればなるほど、苦労は大きくなりますが。

結局、太陽光発電に関するこの大きな値(14GWの変動)に着目したことは、状況を大げさにしすぎたのかもしれません。従来型の発電量はその数値の約半分の変動がありました。この全体の評価は暫定的な数値にもとづいたものであり、需要の下落についてもまだ説明が必要です。ドイツのアルミニウムメーカーで日蝕の間に減産が行われていたというようなニュースは見つかっていません。最後に、今回私は従来型発電設備に対する影響についてのみ調査していたことを心に留めておいてください。もし系統線の調査をしていたら話はもっと違っていたかもしれません。例えば、Energy Brainpool社は、今回の日蝕のための予備電源に300万ユーロのコストがかかると見積もっていた(ドイツ語のレポート)、というように。

元記事:Renewables International, Solar eclipse: how big was the success?(2015年3月22日)ISEPによる翻訳


クレイグ・モリス( @PPchef )は German Energy Transition の主筆者。Petite Planète を運営し、平日は Renewables International に寄稿しています。

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