エネルギー自立に向けた再生可能エネルギー導入のための利害調整

2022年以降のドイツの風力・太陽光発電の方向性 Part 2

ドイツの再生可能エネルギー法と関連法の改正には、ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー自立を推し進めることが期待されている。Part 1に続いて、本稿では再生可能エネルギーと自然保護、空間計画、税制、EU規制との関係などを見ていこう。

連邦自然保護法の改正

自然保護に関する現行の規制は、風力発電開発の障壁のひとつとされていました。特に、「殺傷の禁止」(連邦自然保護法44条Abs.1Nr.1 1§ 44 Federal Nature Conservation Act [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/bnatschg_2009/__44.html )については、州ごとに解釈が異なることが問題視されてきました。

一般に、風力発電事業によって、風車周辺地域の特別保護種の1個体の殺傷リスクが「著しく増大」した場合、「殺傷の禁止」に違反することが予期されます。殺傷禁止と相容れない風力発電プロジェクトについては、許可が下りません。場合によっては、特定の時期(渡り鳥の季節など)に風車を停止させるなど、リスクを低減させる措置を講じることで認可を受けることができます。殺傷リスクの評価には科学的な評価が必要となるものの、これまでは統一的な基準がありませんでした。各州はガイドラインを示しましたが、結局、決定は地方当局に委ねられていました。また、地元の意思決定者は必要な知識を持ち合わせておらず、風力発電事業の認可に関する判断は時間がかかり、しばしば恣意的におこなわれていました。

2018年、ドイツ連邦憲法裁判所は、このような状況では法律の画一的な適用が保証されないと述べ、これらの科学的判断における自治体の負担を軽減するための法律の下位に位置づけられる基準を作成する必要があると州政府に要求しました2German Federal Constitutional Court (2018) BVerfG, Decision of the First Senate of October 23, 2018 [German]: https://www.bundesverfassungsgericht.de/SharedDocs/Downloads/DE/2018/10/rs20181023_1bvr252313.pdf?__blob=publicationFile&v=1

2022年7月の連邦自然保護法(BNatSchG)の改正により、連邦・州レベルでの統一的な規制だけでなく、さらに踏み込んで、風車による繁殖鳥類の殺傷リスクの評価基準を全国的に設定することになりました3Federal Law Gazette (2022) – Fourth Act Amending the Federal Nature Conservation Act [German]: https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/text.xav?SID=&tf=xaver.component.Text_0&tocf=&qmf=&hlf=xaver.component.Hitlist_0&bk=bgbl&start=%2F%2F*%5B%40node_id%3D%271034951%27%5D&skin=pdf&tlevel=-2&nohist=1&sinst=B51B1412。 この改正は、陸上風力発電プロジェクトの許認可プロセスを簡素化・迅速化することを目的としています。

具体的には、新たに追加された §45b BNatSchG には、衝突の危険性があると考えられる15の繁殖鳥類がリストアップされています。それぞれの種について、繁殖地と風力発電プロジェクト間の具体的な距離規定と、評価のための一定の基準が適用される特定のテストエリアもリストアップされています(表1 参照)。このリストは、鳥類保護機関の「ヘルゴランドペーパー」4Länderarbeitsgemeinschaft der Vogelschutzwarten (2020) – Wind energy distance recommendations [German]: http://www.vogelschutzwarten.de/windenergie.htm 、各州の既存のガイドライン、およびそれに先立つ環境大臣会議で作成された種リストに基づいています5Conference of Environment Ministers (2020) –  Standardized assessment framework for determining a significant increase in the risk of killing with regard to breeding bird species at onshore wind turbines [German]:https://www.umweltministerkonferenz.de/documents/vollzugshilfe_signifikanzrahmen_11-12-2020_1608198177.pdf

リストに掲載されていない繁殖期の鳥類は、一般に殺傷禁止の評価に含める必要はありません。繁殖していない鳥類やその他の種(コウモリなど)は、今回の改正には含まれず、従来の規制が適用されます。

表1. 衝突の危険性がある繁殖鳥類のテスト対象エリア(§45b BNatSchG, 第1節)6Federal Law Gazette (2022) – Fourth Act Amending the Federal Nature Conservation Act [German]: https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/text.xav?SID=&tf=xaver.component.Text_0&tocf=&qmf=&hlf=xaver.component.Hitlist_0&bk=bgbl&start=%2F%2F*%5B%40node_id%3D%271034951%27%5D&skin=pdf&tlevel=-2&nohist=1&sinst=B51B1412

繁殖鳥類種 近接距離 * 中心評価エリア * 拡大評価エリア *
オジロワシ
Haliaeetus albicilla
500 2,000 5,000
ミサゴ
Pandion haliaetus
500 1,000 3,000
アシナガワシ
Clanga pomarina
1500 3,000 5,000
イヌワシ
Aquila chrysaetos
1000 3,000 5,000
ヒメハイイロチュウヒ**
Circus pygargus
400 500 2,500
ハイイロチュウヒ
Circus cyaneus
400 500 2,500
ヨーロッパチュウヒ**
Circus aeruginosus
400 500 2,500
アカトビ
Milvus milvus
500 1,200 3,500
トビ
Milvus migrans
500 1,000 2,500
ハヤブサ
Falco peregrinus
500 1,000 2,500
チゴハヤブサ
Falco subbuteo
350 450 2,000
ヨーロッパハチクマ
Pernis apivorus
500 1,000 2,000
シュバシコウ
Ciconia ciconia
500 1,000 2,000
コミミズク
Asio flammeus
500 1,000 2,500
ワシミミズク**
Bubo bubo
500 1,000 2,500

* 距離の単位はメートル、ポールベース中心から測定
** ヒメハイイロチュウヒ、ヨーロッパチュウヒ、ワシミズクは、ローターの下端の高さが海岸付近(最大100km)で30m以下、広い低地で50m以下、丘陵地で80m以下の場合にのみ衝突の危険性がある。ヨーロッパチュウヒを除き、近接距離では適用されない。

 

近接距離では、特定の種について殺傷の危険性が著しく高まり、一般的にその危険性を低減することができないと法的に推定されます。

また、中心評価エリア内では殺傷の危険性が高まると推定されますが、生息地ポテンシャル解析を実施することでその推定を覆すことができます。生息地ポテンシャル解析は、テストエリアの主要な地形の特徴を分析するもので、現地での大規模なモニタリングを含む従来の事前評価よりも簡単です。また、公式に認められた緩和策を実施することで、風力発電プロジェクトを可能にする上でのリスクを大幅に軽減することができます。

拡大評価エリアでは、殺傷のリスクは著しく増加しないと推定されますが、既知の緩和策で減少させることができないエリアにおける種特有の生息状況などにより殺傷の確率が著しく増加する場合には、この推定に反論することができます。

近接距離と評価エリア以外では、殺傷のリスクは著しく増加しないと推定され、繁殖鳥類への影響について追加の検討や緩和措置は必要ありません。

BNatSchG§44b の改正では、風力発電による鳥類殺傷のリスクを低減するために考えられる緩和策を以下のように挙げています。

表2. 風力発電による鳥類の殺傷リスクを低減するために公式に認められた緩和策(§44b BNatSchG, 第2節) 7Federal Law Gazette (2022) – Fourth Act Amending the Federal Nature Conservation Act [German]:  https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/text.xav?SID=&tf=xaver.component.Text_0&tocf=&qmf=&hlf=xaver.component.Hitlist_0&bk=bgbl&start=%2F%2F*%5B%40node_id%3D%271034951%27%5D&skin=pdf&tlevel=-2&nohist=1&sinst=B51B1412

マイクロサイティング
内容: 例えば、個々のケースで鳥類にとって特に重要なエリアから風車を遠ざけたり、重要な餌場への飛行経路を確保したり、風車を移転したりすることで紛争の度合いを軽減することができる。

効果: 禁止行為の発生を回避または低減すること、または緩和措置の程度を低減すること。第1節の表にあるすべての種に対して有効である。

衝突防止システム
内容: カメラやレーダーによる対象種の自動検知にもとづいて、対象種が接近し、風車までの距離が種ごとに事前に定義された距離以下になったときに、タイムリーにローター速度を「スピンモード」に落とすことができるシステムを利用する。

効果: 科学技術の現状によれば、ドイツでの対策は、現在、カメラベースの実証的に有効なシステムが利用可能なアカトビについてのみ検討されている。将来的には、オジロワシ、ミサゴ、マダラワシ、クロトビ、コウノトリなど、衝突の危険性がある大型鳥類についても、原則的に衝突防止システムの導入が可能と思われる。まだ効果が証明されていない衝突防止システムも、その効果をモニタリングするための付随的な措置があれば、ケースバイケースで試験運用することができる。

農作物栽培作業時の停止
内容: 4月1日から8月31日までの間、風力発電のマストベース中心から250m未満の距離にあるエリアで、草地の草刈りや作物の収穫、耕作をおこなう場合、一時的に停止する。風力発電所の場合、その対策の特徴を考慮する必要がある場合がある。停止措置は、農作業の開始から終了後少なくとも24時間まで、いずれの場合も日の出から日没までおこなわれるものとする。種の保護の観点から特に紛争が生じやすい、3つの繁殖地がある場所、または特に絶滅のおそれのある鳥類の場合、2つの繁殖地がある場所の場合、停止措置は、日の出から日没まで、農作業終了後少なくとも48時間おこなわなければならない。この措置は、種特有の行動パターン、特にアカトビの風速に依存した飛行行動を考慮して指示されるものとする。

効果: 農作業中の停止は、定期的に衝突リスクの低減に寄与し、包括的な有益効果をもたらす。農作業中およびその直後に風車を停止させることで、一時的に著しく増加する衝突リスクを効果的に低減することができる。この対策は、アカトビ、トビ、チュウヒ、アシナガワシ、コウノトリに特に有効。

魅力的な代替餌場づくり
内容: 湿地や餌場などの魅力的な代替餌場づくりや、長期的に広範囲に管理された分水嶺への転換は、種ごとに、十分な規模で実施されなければならない。種固有の措置による区域の適合性と設計は、ケースバイケースで決定されなければならない。使用制限および/または栽培要件の契約上の保証が提供されなければならない。開発者と土地管理者・所有者との間の契約により、風力発電の全稼働期間において、対策の実施が保証されなければならない。このような契約上の取り決めの可能性と実現可能性は、事前に承認機関に提示されるものとする。

効果: この緩和措置は、アカトビ、クロトビ、コウノトリ、ハヤブサ、ミサゴ、アシナガワシ、チュウヒ、ワシミミズク、コミミズク、ハチクマに対して特に有効である。衝突の危険性がある種を永久におびき寄せるか、飛行活動をプロジェクト区域外に移すことで、緩和措置の効果が得られる。分布や種によっては、他の対策に追加してはじめて効果が期待できる。

風車基礎の生息域の魅力を下げる
内容: マスト基部(ローターが掃く面積に50mのバッファーを加えたもの)とクレーンの設置場所の最小化といったデザインは、衝突の危険性がある種にとって風車の直接の近傍のエリアの誘引効果を減らすのに役立つ。このため、緩和措置は定期的に実施する必要がある。短い草の植生、休耕地、草刈りされる草地は、いかなる場合でも避ける必要がある。場所、周囲の土地利用、影響を受ける種の範囲によっては、ケースバイケースで緩和策を適応させる必要があるかもしれない。

効果: この緩和措置は、アカトビ、クロトビ、アシナガワシ、コウノトリ、ハチクマに特に有効である。この対策は、単独の保護対策としては十分ではない。

フェノロジーに関連する停止
内容: 風車のフェノロジー関連停止は、繁殖地の利用密度が高まる特定の明確な発達/ライフサイクル(例:交尾期や若鳥の羽化時期)を対象とする。通常、3月1日から8月31日までの日の出から日没までの期間中、最大4週間または最大6週間である。ただし、大雨や強風など特定の気象条件の場合、特定の種特有の行動パターンにより、殺傷リスクの大幅な増加につながるこれらの期間中の定期的な飛行がないことを示す十分な証拠があれば、個々のケースで種ごとに期間を制限することができる。

効果: 原則的に、この措置はすべての種に対して有効である。ただし、かなりのエネルギーロスをともなうため、他の対策がない場合にのみ適用する。

適切な緩和策にもかかわらず、あるいはその効果に疑問がある場合、風力発電の運転が殺傷の禁止に抵触することがあります。このような場合、合理的な代替手段がなく、影響を受ける種の個体群の保全状態が全体として低下していない場合、公共の安全のため、またはその他の公益に優先することを理由として、風力発電プロジェクトが承認される場合があります(BNatSchG第45条 (7))。

BNatSchG の新しい改正では、この免除のための標準化も定められており、「合理的な代替案」を見つけるための半径を20kmに縮小することが含まれています。さらに、免除のケースでも義務付けられる緩和措置としての稼働停止は、年間発電電力量を4~6%以上減少させることは許されません。免除を受けたものの、保全状態を確保するための措置を講じていない開発事業者は、年間発電電力量の2%を国の生物種保護プログラムに支払う必要があります。

国の生物種保護プログラムは §45d BNatSchG に導入されており、連邦自然保護庁と連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省によって管理されています。このプログラムの目的は、風力発電の運転によって影響を受ける種の保全状態を確保し、改善することです。

また、陸上での風力発電プロジェクトのリパワリングは、既存の風力発電の影響により、そのエリアが理想的な繁殖地でないことを認める新たな改正がおこなわれ、より容易になりました。さらに、時間や距離の面での拡大も盛り込まれました。新しい建設は、解体後48ヶ月以内に実施しなければならなくなり(従来は24ヶ月)、新しい風車の高さの最大5倍(従来は2倍のみ)の距離内に建設できるようになりました(§45c (1) BNatSchG)。

短期的な発電電力量の増加のための法改正

ロシアからの自立とエネルギー危機の回避が急務であったため、政府は急遽、再生可能エネルギーの発電電力量を増やすためのいくつかの法改正を導入しました。

小規模太陽光発電システムの最大発電電力量の実現

2012年の再生可能エネルギー法改正により、25kWまでの太陽光発電システムは最大出力の70%に制限されることになりました。この制限の理由は、特に日射量が多い日の系統の安定性を確保するためでした。また、必要に応じて系統への給電を減らすための制御装置もオプションとして用意されていましたが、多くの場合、小規模な太陽光発電システムのコストと比較すると、あまりにも高価でした。平均して、南向きの太陽光発電システムの発電電力量は、70%ルールのもとで、技術的に可能な発電電力量よりも約5%少なくなっています8DZ4 (2022) – 70 percent regulation for photovoltaic [German]: https://www.dz4.de/ratgeber/70-prozent-regelung-photovoltaik/

エネルギー安定供給法3.0の改正の一環として、2022年9月14日以降に稼働した25kWまでの新設の太陽光発電については70%ルールが放棄されました。また、既存の7kWまでの太陽光発電についても、2023年1月1日以降は出力制限をする必要がなくなりました。なお、7kWを超える既存の太陽光発電設備については、スマートメーターの設置を義務付ける計量法(メータリング・ポイント・オペレーション法)のもとですでに移行期間に入っているため、このルールは維持されます9Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action (2022) –  Bundesrat adopts Energy Security of Supply Act 3.0: https://www.bmwk.de/Redaktion/EN/Pressemitteilungen/2022/10/20221007-bundesrat-adopts-energy-security-of-supply-act-30.html

騒音とシャドウフリッカー対策の臨時変更

連邦イミッション保護法(BImSchG)は、ドイツにおける重要な環境保護法です。この法律の目的は、「人間、動植物、土壌、水、大気、その他の物質財を、環境に及ぼすあらゆる有害な影響から保護し、そのような影響の出現を防止すること」10Federal Immission Control Act: https://www.bmuv.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Luft/bimschg_en_bf.pdf にあります。 また、風力発電の許認可プロセスにも大きく関係しています。特に、高さ50mを超える風車の環境への影響を評価するプロセスを、環境影響評価(EIA)というかたちで確立しました。その一環として、騒音防止に関する技術指針(TAノイズ)にもとづき、騒音の放出に関する評価が実施されます。許容される騒音レベルは、地域の種類や時間帯によって異なります(例:住宅地の日中は50dB(A)、夜間は35dB(A)。商業ゾーンの日中は65dB(A)、夜間は50dB(A)等)11Technical Instructions on Noise Abatement – TA Noise [German]: https://www.verwaltungsvorschriften-im-internet.de/bsvwvbund_26081998_IG19980826.htm

短期的に陸上風力の発電電力量を増やすため、政府は2023年4月15日までTAノイズに記載されている夜間の制限値から4dB(A)超過することを認める決定をおこないました。そのため、風力発電は騒音による停止を減らすことが可能となり、特に午後10時から午前6時までの発電電力量を増やすことができるようになりました12§ 31k Federal Immission Control Act: http://www.gesetze-im-internet.de/bimschg/__31k.html

風力発電プロジェクトでは、光学的なイミッションも関係します。いわゆるシャドーフリッカー(回転する風車のブレードの影のちらつき)は、一般的に1日30分未満、1年30時間未満に抑える必要があります。また、気象学的パラメータ(例:太陽光の強さ)を考慮した自動スイッチオフを使用する場合は、その時間を年間8時間未満に短縮しなければなりません13Federal/State Working Group on Immission Control (2020) – Notes on the determination and assessment of optical immissions from wind turbines [German]: https://www.lai-immissionsschutz.de/documents/wka_schattenwurfhinweise_stand_23_1588595757.01 。この規制は2022年9月14日から停止されます。そのため、シャドーフリッカーで停止が多くなる朝夕を中心に、より多くの発電電力量が期待できます。なお、自然保護のための稼働停止は引き続き義務化されています。

太陽光発電所の積極的なリパワリング

エネルギー供給安定化法3.0の一環として、太陽光発電所の積極的なリパワリングが許可されます14PV Magazine (2022) – EnSiG amendment allows active repowering of solar parks and tender installations up to 100 megawatts [German]: https://www.pv-magazine.de/2022/09/28/ensig-novelle-erlaubt-aktives-repowering-von-solarparks-und-ausschreibungsanlagen-bis-100-megawatt/ 。 これにより、まだ稼働しているPVモジュールを交換することが可能になります。これまでは、再生可能エネルギー法にもとづいて実施されるプロジェクトにおいて、不良品、盗難、破損したPVモジュールのみを交換することができました。今回の変更により、旧型のモジュールをより効率の高い新型のモジュールに置き換えることができるため、新しい土地や架台なしで発電電力量を増やすことができます。

当初指定された出力を超える出力は、再生可能エネルギー法では報酬を得ることができず、別の方法(PPAなど)で取引しなければなりません。とはいえ、既存の設備の容量に追加で設置する発電所の場合、まったく新しいプロジェクトを計画するのに比べれば、計画作業はずっと簡単になるはずです。したがって、太陽光発電の容量追加は、積極的なリパワリングでより早く、短期間に実施することができます。

エネルギー市場革新協会(Association of Energy Market Innovators)によると、現在ドイツにある59GWの太陽光発電の容量は、積極的なリパワリングによって少なくとも100GWまで増やすことができるとされています15Association of Energy Market Innovators (2022) – Active Repowering of Solar Parks [German]: https://www.bne-online.de/fileadmin/user_upload/22-03-18_bne_Aktives_Repowering_Solarparks.pdf 。 しかし、これまでのところ、リパワリングは地上設置型の太陽光発電システムに対してのみ計画されており、屋上設置型の太陽光発電システムに対しては計画されてはいません。

地域参加と再生可能エネルギーコミュニティの強化

新しい再生可能エネルギー法には、コミュニティパワーを強化することを目的とした改正も含まれています。その背景には、コミュニティ主導の再生可能エネルギープロジェクトは、アクターの多様性を高め、地域の受容性を強化し、地域の付加価値を高めるということがあります。再生可能エネルギーコミュニティは、風力発電に限らず、技術的にオープンなかたちで定義されるようになりました。つまり、太陽光発電所も優遇措置を受ける権利があります。

対象となる再生可能エネルギーコミュニティは厳格に定義され、利益の搾取を避けるため、2021年の再生可能エネルギー法に比べて要件が引き上げられました16§ 3 Renewable Energy Sources Act 2023 [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/eeg_2014/__3.html。再生可能エネルギーコミュニティは、少なくとも50人の自然人から構成されなければなりませんが、以前の基準値は10人でした。議決権の75%(従来は51%)は、計画中の再生可能エネルギープロジェクトの半径50km以内に全部または一部が含まれる郵便番号地域に住居登録している自然人によって保有されなければなりません。この距離は、太陽光発電の場合は外縁から、風力発電の場合はタワーの中心から測定されます。残りの議決権シェアは、中小企業や地方自治体が保有することができ、いずれの構成員も議決権の10%以上を保有しないことが条件となります。さらに、再生可能エネルギーコミュニティは、過去3年間に同じ技術、同じセグメントのプロジェクトを契約したことがなければ、優遇措置を受けることができません。

対象となる18MWまでのコミュニティ風力発電と6MWまでの太陽光発電は、2023年から入札が免除されるため、手続き面での負担が軽減されます17§ 22 Renewable Energy Sources Act 2023 [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/eeg_2014/__22.html 。コミュニティ風力発電プロジェクトの報酬額は、2年前に提出された陸上風力発電の入札の最高入札額の平均値で決定されます。コミュニティ太陽光発電の場合、報酬は契約の前年度の最高入札額の平均値にもとづいて決定されます。

さらに、連邦経済・気候行動省は、2023年1月1日からスタートした「陸上風力発電のための市民エネルギー企業」という新しい資金調達ガイドラインを導入しました18Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action (2022) – Announcement of the guideline for the “Citizens’ Energy Companies” support program for onshore wind energy [German]: https://www.bundesanzeiger.de/pub/publication/TLXzPEv6q4RxgRJJHyd/content/TLXzPEv6q4RxgRJJHyd/BAnz%20AT%2021.12.2022%20B1.pdf?inline。市民風車の場合、計画・許認可費用(1件あたり20万ユーロ = 約2,800万円が上限)の最大70%が融資されます。プロジェクトの初期段階で高いコストに悩まされることの多い市民エネルギー企業の設立のハードルを下げることが目的です。この資金は、プロジェクトが成功した場合にのみ返済する必要があります。2023年、このプログラムの資金は750万ユーロ(約10億円)で、次年度以降も同様の金額が見込まれています19Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action (2022) – A boost to public acceptance for the energy transition – support for citizens’ energy to be expanded https://www.bmwk.de/Redaktion/EN/Pressemitteilungen/2022/12/20221224-a-boost-to-public-acceptance-for-the-energy-transition-support-for-citizens-energy-to-be-expanded.html

再生可能エネルギーコミュニティの優遇措置の他に、新しい改正では、影響を受ける自治体が利益を享受できるようになりました。EEG 2023 の §6 では、風力発電や太陽光発電の開発者が、プロジェクトの半径2,500m以内の自治体に対し、最大0.2セント/kWhを支払うことを許可しています。この改正は、贈収賄の処罰リスクを回避しつつ、地域への経済的な貢献の可能性を提供することで、受容性が高まるとの意図のもとで導入されました。これらの支払いは再生可能エネルギー法では義務ではなく、また0.2セント/kWh未満とすることも可能です20§ 6 Renewable Energy Sources Act 2023 [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/eeg_2014/__6.html

再生可能エネルギー賦課金の廃止

消費者はエネルギー転換を財政的に支えるために、電気料金に課徴金、いわゆるEEG賦課金を支払う必要がありました。年間3,500kWhを消費する平均的な家庭は、この賦課金によって2021年に227.50ユーロ(約32,000円)を支払わなければなりませんでした。2022年7月以降にEEG賦課金を廃止する理由として、ウクライナ戦争も影響している電力料金の高騰が挙げられました。政府は、EEG賦課金廃止による削減分を消費者に還元し、生活費の増加から消費者を救うという規制を設けました21Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action (2022) –  Renewable energy levy completely eliminated as of 1.7. [German]:https://www.bmwk.de/Redaktion/DE/Pressemitteilungen/2022/07/20220701-eeg-umlage-entfaellt-ab-1-7-vollstaendig.html 。新しい再生可能エネルギー法で、再エネ賦課金に関するすべての部分は、危機が去るまで一時的に停止されるのではなく、永久に削除されました。賦課金で失われた収入は、主にCO2税で補われます。

小規模な太陽光発電の設置にともなう税制や手続きの軽減

2023年度の各種税法の新規定を採用する「2022年税法」には、小規模な太陽光発電設備の設置者に有利な改正が含まれています。2023年1月より、住宅、公共建築物、公益に資する活動のために使用される建築物に設置される場合、必要な部品や蓄電池を含む最大容量30kWpの太陽光発電システムに対する消費税が0%に引き下げられました22§ 12 Turnover Tax Act [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/ustg_1980/__12.html

さらに、太陽光発電システムによる所得は、一戸建て住宅では最大30kWp、集合住宅では住宅・商業施設1戸あたり15kWp(課税主体あたり最大100kWp)の出力であれば所得税が非課税となります。この規定は、すでに2022年の課税年度から遡って適用されています23§ 3 Income Tax Act [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/estg/__3.html

追加的な変更点として、小規模な太陽光発電プロジェクトの系統接続がより簡素化され、官僚的な手続きが少なくなりました。設置容量が30kWまでの太陽光発電プロジェクトでは、系統運用者が系統接続に立ち会う必要はなく、書面による確認で十分となります。小規模な太陽光発電プロジェクトの系統接続は、標準化とプロセスのデジタル化によってさらに簡素化される予定です。2025年までに、系統運用者は、系統接続申請の処理手順、申請者が提出する必要のある情報、系統接続にかかる費用に関する情報などの詳細情報を提供するオンラインポータルを設置しなければなりません。また、オンラインポータルは、系統接続に必要な書類を直接アップロードできるよう求められています24§ 8 Renewable Energy Sources Act 2023 [German]: https://www.gesetze-im-internet.de/eeg_2014/__8.html

関連するEU規制

再生可能エネルギー法のFIT賦課金のような政府支援は、欧州単一市場の競争を歪める可能性があるため、欧州委員会による国家補助規則で例外的に正当化される場合にのみ認められています25European Commission – State Aid Overview:  https://competition-policy.ec.europa.eu/state-aid/state-aid-overview_en 。2022年12月、欧州委員会は再生可能エネルギー法の改正を承認したため、2023年1月1日からこの法律にもとづく政策措置が施行されるようになりました26Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action (2022) –  European Commission approves 2023 Renewable Energy Sources Act and 2023 Offshore Wind Energy Act under State aid rules: https://www.bmwk.de/Redaktion/EN/Pressemitteilungen/2022/12/20221222-european-commission-approves-2023-renewable-energy-sources-act-and-2023-offshore-wind-energy-act-under-state-aid-rules.html 。欧州委員会は、今回の改正が「再生可能エネルギーの生産を促進し、温室効果ガスの排出を削減するために必要かつ適切」であり、より系統安定をサポートすると述べて、決定を正当化しました。さらに、「支援は必要最小限に限定されていることから的確であり、この制度のプラス効果、特に環境へのプラス効果は、競争への歪みというマイナス効果を上回る」27European Commission (2022) – State aid: Commission approves modification of German scheme to support electricity production from renewable energy sources:  https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_7794 と述べています。

欧州委員会は、再生可能エネルギー法2023が、欧州が2050年までに初の気候中立大陸となり、特に2030年までに温室効果ガスのネット排出量を1990年比で少なくとも55%削減することを目的とする欧州グリーンディールに貢献すると認識しています。これを達成するために、2030年の目標として、EUのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を45%にすることも提案されています28European Commission – Renewable energy targets: https://energy.ec.europa.eu/topics/renewable-energy/renewable-energy-directive-targets-and-rules/renewable-energy-targets_en

また、EUは、再生可能エネルギープロジェクトの許認可プロセスの遅さを、設定した目標達成の障壁と位置づけています。そのため、ロシアからの化石燃料の輸入依存度を下げるために導入された REPowerEU パッケージ29European Commission (2022) – REPowerEU: A plan to rapidly reduce dependence on Russian fossil fuels and fast forward the green transition:  https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_3131 の一部として、2022年12月に欧州議会のメンバーによって法律案が採択されました。

法律案は、ドイツ政府と同様に、再生可能エネルギー事業を、最優先の公益に資するもの、公衆の健康と安全に資するものと定義しています。この定義により、許認可プロセスがより合理化され、またEUの環境規則が免除されることになります。さらに、加盟国は指令施行後2年以内に、いわゆる「再生可能エネルギー加速エリア(Renewable Acceleration Areas)」を設計しなければなりません。これらのエリアは、環境への悪影響を回避するか、少なくとも大幅に削減しつつ、再生可能エネルギープロジェクトに適した場所でなければなりません。また、Natura 2000サイト、自然公園、鳥や海の移動ルートなど、環境的に非常に敏感なエリアは、建物の屋上などの人工的な表面を除き、除外しなければなりません。さらに、再生可能エネルギー加速エリアが決定される前段階での一般市民の参加が必要になります30European Parliament (2022) – Energy crisis: MEPs back plans to boost the deployment of renewables: https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20221209IPR64422/energy-crisis-meps-back-plans-to-boost-the-deployment-of-renewables

「再生可能エネルギー加速エリア」での新規再エネ設備導入は、わずか9ヶ月で認可される見込みです。開発事業者が所轄官庁から許可申請に対する回答を得られなかった場合、いわゆる「ポジティブ・サイレンス原則」により、許可は承認されたものとみなされます。指定エリア以外では、新規設置の場合、許可手続きは18ヶ月を超えないこととされています。既存の再生可能エネルギープロジェクトのリパワリングについては、その期間は6ヶ月未満となります。

さらに、小規模な太陽光発電の設置に関する規則をさらに簡素化する必要があります。EU諸国は、建物への太陽光発電の設置許可が1ヶ月で下りるようにする必要があります。50kW以下のプロジェクトについては、簡単な届出手続きで十分であり、環境影響評価も不要とすることが求められます31European Parliament (2022) – Energy crisis: MEPs back plans to boost the deployment of renewables: https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20221209IPR64422/energy-crisis-meps-back-plans-to-boost-the-deployment-of-renewables

採択された法律案は、欧州議会と欧州理事会による第1次検討に持ち込まれることになります。第1次検討に締切は設定されていません32European Parliament – The Ordinary Legislative Procedure: https://www.europarl.europa.eu/olp/en/ordinary-legislative-procedure/overview

まとめ

2022年のドイツ政府による広範な立法措置は、関連するステークホルダーから野心的で正しい方向へのステップであると一般的に評価されています。しかし、ドイツにおける太陽光発電と風力発電の急速な拡大にはまだ多くの障害があり、高められた気候目標を達成する上で、さまざまな法律の新たな変更が十分であるかどうか疑問が残されています。

重大な障壁は、熟練労働者や原材料の不足、工場の不足、インフレによる再生可能エネルギープロジェクトの資金調達・建設・運営におけるコスト上昇です。さらに、新しい規制の効果的な実施を可能にするために、州や自治体行政における体制を変更することは時間がかかるでしょう33Clean Energy Wire (2023) – Renewable energy leaders show mixed views on whether Germany can meet renewable targets – media: https://www.cleanenergywire.org/news/renewable-energy-leaders-show-mixed-views-whether-germany-can-meet-renewable-targets-media

こうした障壁は、風力発電や太陽光発電の入札にも反映されています。風力発電の入札は、2022年には何度も入札枠を下回り、2.4GWの容量しか設置されませんでした。2023年の入札予定枠13GWに達するには、昨年の5倍以上の陸上風力発電を導入しなければなりません34Clean Energy Wire (2023) – Germany auctions record onshore wind capacity to compensate slow 2022 rollout: https://www.cleanenergywire.org/news/germany-auctions-record-onshore-wind-capacity-compensate-slow-2022-rollout 。 通常は好評を博している太陽光発電の入札でさえ、昨年は応募が少なく、最新の入札では、予想される890MWのうち、総容量609MW、104件が集まっただけでした35Clean Energy Wire (2023) – Solar power auctions in Germany again fail to meet government’s ambitious capacity targets:  https://www.cleanenergywire.org/news/solar-power-auctions-germany-again-fail-meet-governments-ambitious-capacity-targets

さらに、自然保護団体は、今回の法改正案で、再生可能エネルギーの急速な拡大が実際に自然と調和したかたちで実施できるかどうかを懸念しています。例えば、ドイツ最大の環境団体のひとつであるNABUは、風力発電事業における殺傷リスクの評価が標準化されたことは歓迎するが、結論として風力に敏感な繁殖鳥類15種をリストアップしたことは批判しています。NABUは、このリストには科学的根拠がなく、欧州の環境法に抵触する可能性があると主張しています36NABU (2022) – Statement of the NABU Federal Association on the “Draft of a Fourth Law for the Amendment of the Federal Nature Conservation Act”https://www.nabu.de/imperia/md/content/nabude/energie/wind/20220613_stellungnahme_nabu_batschg.pdf

全体として、ドイツの風力・太陽光発電分野に影響を与えるエネルギー政策の変更は、ロシアからの自立の必要性に後押しされ、例外的に広範囲におよびましたが、効果的な実施を確保するために、さらなる改善と議論が必要であることは確かです。

 

@energydemocracy.jp エネルギー自立に向けた再生可能エネルギー導入のための利害調整 – 2022年以降のドイツの風力・太陽光発電の方向性 Part 2 /クリスティアン・ドート – https://energy-democracy.jp/4892 #エネデモ #ドイツ #再生可能エネルギーコミュニティ #再生可能エネルギー加速エリア #再生可能エネルギー法 #積極的リパワリング#自然保護 #鳥類保護 ♬ ‘BIMMER’ – Passing Currents

環境エネルギー政策研究所(ISEP)リサーチアシスタント。ドイツ・マールブルグ大学で平和・紛争研究の修士号を取得し、現在、名古屋大学大学院環境学研究科博士課程在籍。再生可能エネルギーの社会的受容と、日本における営農型太陽光発電の社会政治的背景をテーマに研究に取り組んでいる。

次の記事

最優先の公益としての再生可能エネルギーの導入

前の記事

ロケットからクリスタルへ

Latest from 気候変動・エネルギー政策

イエローベスト運動と温暖化問題

燃料税値上げをきっかけにはじまったイエローベスト運動は、フランスにどのような影響をもたらしたのか。温暖化対策と財政政策の緊張関係は、国民討論を通じて公平な社会の形成へとつながっていくのか、現地でのインタビューをもとに考察

エネルギー転換の歴史

多くの人たちが、ドイツのエネルギー転換(Energiewende)は、日本の福島第一原発事故を受けて、アンゲラ・メルケル首相が脱原発を決めたことから始まったと思っています。しかし、Energiewendeは、政府がそれ以前に決めていた脱原発の計画に戻ってきたことに他なりません。ドイツの歴史と社会に深く根付いた長いプロセスは、自然エネルギーの大幅な増加を引き起こす政策を創り出し、いまや低炭素経済への移行の中心的な駆動力となっています。

パリ会合(COP21)で目指されるべき国際枠組みとは?

このサイトに関心を持たれている方のほとんどは、気候変動問題やそれにかかわる国際的な動きをよくご存知の方でしょうから、基本的な「いろは」の話は省略して、今年(2015年)末にパリで開催される気候変動枠組条約第21回締約国会

複合危機をどう乗り越えるか

地球規模での新型コロナウイルスの感染爆発、いわゆるパンデミックがますます広がっている。日本でも都市封鎖に近いかたちで営業や外出の自粛を要請する緊急事態宣言が発令されたが、この先の展開は見通せない状況だ。

Energy Democracy は、環境エネルギー政策研究所(ISEP)による専門情報メディアです。環境エネルギー政策に関する論考を、厳選された国内外の専門家、実務家、ジャーナリストが寄稿します。

ご寄付

Webサイトの継続的な運営・拡充のため、ご寄付をお願いいたします。

メールニュース

ソーシャルメディア

Protected by reCAPTCHA. The Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
 Copyright © Institute for Sustainable Energy Policies. All rights reserved. Since 2014.