ドイツの太陽光発電戦略

2035年に向けた太陽光発電導入の道筋

2022年、ドイツは、より迅速な気候変動対策の必要性と、エネルギー自給の重要性を浮き彫りにしたロシアによるウクライナ侵攻を受けて、再生可能エネルギー法を改正しました。

ドイツの太陽光発電(PV)セクターは勢いを増し、2023年最初の5ヵ月間ですでに4.9GWを超える導入に至りました1Federal Network Agency (2023) – Statistics of selected renewable energy sources for electricity generation – May 2023 [German]. 。2023年5月29日には、太陽光発電システムの総導入件数が300万件に達し、太陽光発電の総設置容量は70GWを超えました2Federal Network Agency (2023) – Statistics of selected renewable energy sources for electricity generation – May 2023 [German].

特に、個人住宅用の屋上太陽光発電システムの需要が急増しています。2023年第1四半期に新たに個人住宅に設置された太陽光発電システムは15万9,000件で、これは前年比146%の増加です。需要増加の理由としては、電気料金の高騰、パンデミック時のマイホーム投資率の上昇、FIT買取価格の引き上げや新規設置システムの消費税免除といった最近のエネルギー政策変更が挙げられます3 Tagesschau (2023) – Strong growth in demand for solar systems [German].

2023年4月の入札に見られるように、事業用太陽光発電に対する需要も高まっています。2GWの契約枠に対して2.9GWの入札が登録され、デベロッパーがコスト上昇や納期の問題に直面しているにもかかわらず、2022年6月以来の応募超過となりました。

とはいえ、 2030年までに215GWの太陽光発電を導入する という目標を達成するためには、エネルギー転換のペースをさらに加速させる必要があります。目標とする年間導入量は着実に増加し(2023年9GW、2024年13GW、2025年18GW)、 2026年からは年間22GW となります。その内訳として、 地上設置型太陽光発電を11GW  屋根設置型太陽光発電を11GW 導入し、22GWを達成する計画です。その背景には、コスト効率的な導入と、できるだけ需要に近い場所での導入という2つのアプローチを均等に拡大させることで、新たに土地を太陽光発電で覆うことを最小化するという意図があります。

2030年までに太陽光発電の設備容量を3倍にするという目標を達成するためには、包括的な戦略が不可欠です。そこで経済・気候行動省(BMWK)は、いわゆる「 太陽光発電戦略(Photovoltaic Strategy) 」を策定しました。

2023年3月に開催された「第1回ソーラーサミット」では、その最初の草案が発表され、ロベルト・ハベック経済・気候行動相が強調するように4BMWK (2023) – First PV summit: Habeck presents a draft for a photovoltaics strategy [German]. 、「すべての関係者の協力があってこそ」成功するものであることから、戦略に対する関係者からのフィードバックが奨励されました。BMWKは、この戦略について600件以上のコメントを受け取り、これらを考慮した上で、5月の「第2回ソーラーサミット」では改訂された太陽光発電戦略が紹介されました。

太陽光発電戦略の目標は、太陽光発電の拡大を大幅に加速させる目標、行動分野、対策を特定することであり、短期および中期に焦点を当てています。同省は、2025年秋に終了するこの立法期間の終わりまでに、提案された措置の多くを実施したいと考えています。法律上の適応要件は、いわゆる「 ソーラーパッケージ I および II 」と呼ばれる2つの連続した立法パッケージで実施されます。最初のソーラーパッケージは、2023年7月の夏休み前に発表される予定です。

2035年の太陽光発電ビジョン

太陽光発電戦略の一環として、2035年における太陽光発電のビジョンは以下のように策定されました。

  • 太陽光発電のシェアは30%を超え、ドイツの電力供給の重要な柱となっている。年間22GWを導入することで、ドイツは新規設置容量では欧州のリーダーとなる。
  • 太陽光発電の地上設置型システムは、最も費用対効果の高い発電技術である。土地の競合は、インテリジェントなコンセプトとイノベーションによって予防される。動植物の新たな生息地を創出する生物多様性太陽光発電(Biodiversity Solar PV)は、農地における営農型太陽光発電(Agrivoltaics)と同様に、標準的なものとなる。
  • 太陽光発電と太陽熱利用システムは、建築物における標準的なものとなる。建物の部材に直接組み込まれている場合もある。すべての新築・改築された建物にはソーラーシステムが設置される。原則として、屋根全体が使用される。
  • 太陽光発電システムからの電力は、熱やモビリティなど、部門を超えて使用されることもある。発電と消費が時間的に乖離している場合、電気を一時的に貯蔵して後で使用することもできる。
  • 集合住宅の住民も、屋根に太陽光発電システムを設置することで、ようやくエネルギー転換に参加することができる。また、バルコニーに設置する太陽光発電システムは、居住者自身が簡単に設置できる。
  • 屋根上太陽光発電システムの系統への接続を容易にする。系統連系手続きは標準化され、デジタル化され、接続依頼は短時間で実施できるようになる。太陽光発電システムは、系統とシステムの安定に貢献し、基本的な系統機能を提供する。
  • 系統連系の標準化と市場通信のデジタル化の結果、太陽光発電システム事業者は、電力と柔軟性に関するさまざまな市場に参加し、電力を直接販売したり、その全部または一部をグリーン電力製品に利用できるようになる。
  • 太陽光発電モジュールや、インバーターなどその他の必要な部品は、ドイツや欧州内でかなりの程度生産されており、技術に関する知的財産は欧州内で入手可能となる。ドイツと欧州の太陽光発電産業は国際競争力をもつようになり、導入コストは大幅に上昇せず、太陽光発電の目標はコスト効率よく達成できる。職人や熟練労働者の能力も拡大しており、太陽光発電の導入拡大に対応できる。
  • 余剰電力は一時的に貯蔵、輸出、または水素に変換される。
  • ドイツは、ウエハー加工とプラント・機械工学のイノベーション・リーダーとなる。シリコンとペロブスカイトのタンデム構造による高性能セルの開発に注力する。
  • 太陽光発電システムの建設と運営に関連する官僚的な手続き要件は必要最低限に限られており、シンプルで、運営者側の労力も少なくなる。
  • 太陽光発電システム運営への投資に対する税制上の障壁は完全に撤廃される。特に、テナントによる電力供給モデルや農地・林地での太陽光発電システムは、税制上も魅力的なものとなる。

もっとも重要な行動分野

2035年のビジョンを達成するために、ソーラーパッケージ I および II で実施されるべきもっとも重要な行動分野と適切な措置の11項目が決定されました。以下では、提案された70の施策のうち、特に重要なものを紹介します。

1. 地上設置型太陽光発電システムの導入拡大

BMWKは、建築物使用条例と建築基準法を明確化・簡素化し、地上設置型太陽光発電システムにより多くのエリアを利用できるようにすることを意図しています。地上設置型システムのための新たなエリアのゾーニングは、さまざまなレベルの計画にかかわるため、しばしば長いプロセスを要することになります。

その第一歩として、小規模な営農型太陽光発電システムを優遇する改正案が2023年3月に作成され、発効に向けた立法手続きが進められています。この改正案が採択されると、 面積が2.5ヘクタールを超えず、農業・園芸・林業の経営と空間的・機能的に関連するものであれば、ゾーニング計画を事前に作成することなく、1農場につき1件の営農型太陽光発電システムを許可することが可能になります 。この優遇措置を適用する場合、 小規模営農型太陽光発電に必要なのは建築申請のみ で、公共利益に反する場合にのみ当局によって却下されます。計画された改正のほかに、営農型太陽光発電の普及状況と拡大可能性を検討する部門委員会が設置されました。

欧州共通農業政策(CAP)の改正により、農家が農業補助金の受給を希望する場合、2024年から少なくとも4%の土地を耕作から切り離し、良好な農業・環境条件に維持することが義務づけられます。この措置は、農業分野における生物多様性を高めるために実施されます。太陽光発電戦略では、いわゆる 生物多様性PV(Biodiversity-PV:プロジェクト内に自生植物を植えた牧草地をつくるなど、生物多様性を高める対策を含む太陽光発電システム) が、CAPの前述の条件を満たす可能性があることを提案しています。 生物多様性PVは、非生産的な土地の農家に副収入を提供し、同時に再生可能な電力を供給しながら、生物多様性を増加させることができます。広範な農業生産をともなう営農型太陽光発電が条件を満たすかどうかも議論されています。

BMWKは、関連するステークホルダーと生物多様性PVの定義を確立し、再生可能エネルギー法に統合することを目指しています。生物多様性PVは、一般的にプロジェクトの地域環境へのネガティブな影響をオフセットするために必要とされる補償地域を必要としないように規制されるべきです。

地上設置型太陽光発電の利用可能地域を拡大するための追加措置としては、連邦州が反対しなければ、工業地域や不利な条件下でのプロジェクトを許可することが挙げられます。現時点では、各州が自ら太陽光発電のための不利地域の利用可能性を積極的に公表する必要があり、16州中9州しか公表していません

2. 屋根での太陽光発電の促進

再生可能エネルギー法は、100kW以上の太陽光発電システムには電力を直接販売することを義務付けています。つまり、太陽光発電事業者は発電した電気を買い取ってくれる買取事業者(アグリゲーター等)を見つけなければならなりません。しかし、自家消費量の多いシステムでは、予測が困難で価格も低い余剰電力のリスクを負担してくれる買取事業者を見つけるのに苦労することが多いのが実情です。

これは、太陽光発電事業者が余剰電力に対する支払いを求めない場合であっても同様で、バランシングリスクが買取事業者の収益機会を上回ることが多いからです。そのため、太陽光発電事業者は、余剰電力を抑制するか、そもそも100kWを下回るようにシステムを計画することが多くなってしまいます。その結果、倉庫やスーパーマーケットの大きな屋根が十分に活用されていません。

BMWKは、100kWが太陽光発電システムの閾値になってしまわないように、直接販売義務に関する規制をより柔軟なものにすることを検討しています。新しい柔軟な規制は、自家消費率の大小にかかわらず、直接販売がもっとも魅力的な選択肢になることを保証しなければなりません。

小規模太陽光発電プロジェクトについては、直接販売の技術的要件を引き下げるべきです。これまでは、直接販売を利用するすべてのプロジェクトに、系統運用者による遠隔監視と遠隔制御のための技術装置が必要でした。しかし、実際には、これらの監視・制御機能は、容量が小さいプロジェクトでは使用されず、小規模事業者の参入障壁となっていました。そのため、25kW以下のシステムに対して、この要件は廃止すべきです。

さらに、地上設置型太陽光発電システムのリパワリングを認めた昨年の再生可能エネルギー法改正と同様に、屋根上太陽光発電のモジュール交換を可能にし、残りの買取期間を新しいモジュールに移転することができるようにべきです。

3. テナント電力の簡素化と共同発電・消費モデル

テナント電力とは、住宅の屋上に設置された太陽光発電システムで発電された電力を、系統を通さずに、その建物内または近隣の消費者がその場で直接供給・消費するものです。BMWKは、テナント電力に関する手続きを簡素化し、その結果として、より多くのテナントがエネルギー転換に直接参加できるようにすることを目指しています。

さらに、オーストリアのモデルにもとづいた共同発電・消費モデルの導入を考えることができます。従来のテナント電力モデルとの違いは、主に売電方法にあります。

テナント電力モデルでは、一般的に発電設備を保有する建物オーナーもしくはエネルギー事業者が電力供給者となり、テナントへの売電をおこないます。共同発電・消費モデルでは、太陽光発電システムからの電力は施設の消費者に比例配分され、系統購入量から差し引かれます。そのため、消費者は建物オーナーもしくはエネルギー事業者から電力を購入するのではなく、共有の太陽光発電システムが発電した電力を消費することになります。これにより、共同発電・消費モデルでは、通常の供給者の義務が取り除かれ、プロセスが簡素化されます。

4. バルコニーPVの利用促進

バルコニーに設置できる小型の「プラグイン」太陽光発電システムがドイツで人気を集めています。総容量100MWのいわゆる「バルコニーPV」は、すでに25万台以上が設置されています。バルコニーPVは、高いコストや煩雑な手続きなしで設置することが可能であり、限られたスペースでも設置することができます。そのため、幅広く人々がエネルギー転換に積極的に参加することができます。また、バルコニーPVの設置者が太陽光発電の可能性を肌で感じ、屋根上太陽光発電の設置へと踏み出すことが期待されています。

600WまでのバルコニーPVシステムの簡易登録はすでに可能です。バルコニーPVシステム事業者は、電気技師の署名なしで系統運用者に登録を提出し、専門家が立ち会うことなくシステムを起動することができます。BMWKは、この基準を800Wまで引き上げることを目指しています。

一般的に登録は簡単であるにもかかわらず、テナントやアパートのオーナーは、バルコニーPVを運用するために、大家や管理組合の許可が必要になります。BMWKは、バルコニーPVの優遇措置を確立し、テナントやアパート所有者が運用に同意できるようにすることを提案しています。

5. 系統接続のスピードアップ

再生可能エネルギープロジェクトの系統接続は、エネルギー転換を遅らせる要因となっています。系統運用者や設置業者の限られた人的資源では、現在増加傾向にある太陽光発電の新設に追いつくことはできません。標準化されデジタル化されたプロセスは、系統接続プロセスを迅速化するのに役立ちます。

屋根上太陽光発電システムの設置には、電力を系統に売る前にメーターの交換が必要です。しかし、新規設置が多いため、交換が遅れがちで、最近決められた最長1ヶ月の期間内におこなわれないことが多くなっています。メーター事業者がこの期限を守らない場合、太陽光発電事業者は自分でメーターを調達し、設置することができます(自己実施)。さらに、売電設備容量が270kWまたは設置容量が500kWを超える屋根上太陽光発電システムの場合、系統接続に必要な認定が緩和されます。

地上設置型太陽光発電システムの場合、第三者の敷地を横切るケーブルに関する法的紛争や困難な交渉が、しばしば系統接続の遅れにつながっています。BMWKは、電力系統の拡張やブロードバンド接続ではすでに慣例となっている、補償金と引き換えに接続線の敷設と運用を可能にする再生可能エネルギー発電所のための「通行権」規制の創設を目指しています。この規則は、法的紛争を減らすことによって、再生可能エネルギーの系統接続を加速させるでしょう。

6. 受容性の向上

BMWKは、エネルギー転換における社会的受容とステークホルダー参加の重要性を強調しています。社会的受容が高まれば、紛争が減り、プロジェクトに利用できる土地が増える可能性があります。

エネルギー転換と再生可能エネルギープロジェクトを地域のステークホルダーに理解してもらうためには、信頼性が高く準備の整った情報の提供が不可欠となります。陸上風力エネルギー庁は、すでに陸上風力エネルギーに関する包括的な情報、調査、知識移転サービスを提供しています。同庁は、地上設置型太陽光発電にも焦点を拡大することを予定しています。

BMWKはまた、再生可能エネルギープロジェクトの資金面での人々の参加のあり方を改善させる法的余地があるのかどうか、例えば、そのような参加を義務化することが可能なのか、といったことの分析を検討する予定です。さらに、コミュニティエネルギープロジェクトに対する煩雑な手続きや障壁をさらに緩和し、計画段階での財政的支援をさらに強化することが可能かどうかも検討します。

7. エネルギー法と税法の効果的な連動

エネルギー政策の法的枠組み以外にも、税法や他の法律との連動が太陽光発電の拡大を妨げる可能性があります。既存の障害を取り除くためには、すべての関係省庁が支援する総合的なアプローチが必要です。そのためBMWKは、太陽光発電の拡大を加速させるため、税法のさらなる簡素化を連邦政府内に働きかけていく予定です。

8. サプライチェーンを確保し、競争力のある欧州内生産を促進する

再生可能エネルギープロジェクトに必要な部品の入手にボトルネックがあると、エネルギー転換が遅れる可能性があります。現在、欧州では、まとまった量の太陽光発電の一貫製造はおこなわれていません。その結果、ドイツと欧州は、設置される太陽光発電製品の大半を輸入に頼っており、その大半は中国から輸入されています。

ドイツと欧州の太陽光発電産業の国際競争力を再び高めることを目的として、いくつかの施策が計画されています。ドイツにおける太陽光発電産業の再確立に関するフィージビリティスタディが委託され、投資支援プログラムが計画されるなど、いわゆるイノベーションハブにおける研究開発が拡大しています。欧州レベルでは、政治・産業・研究の連携を目的とした変革技術プラットフォームの設立構想が提案されています。

9. 熟練労働者の確保

十分な数の熟練労働者が存在することも、エネルギー転換を成功させる上でのの重要な要素です。しかし、風力発電と太陽光発電の分野では20万人以上の労働者が不足しています。多くの欠員はもはや埋めることができず、対策を講じなければ、エネルギー転換のペースが増すにつれて不足は深刻化するでしょう。

そのため、BMWKは、未来志向の職業のための教育・訓練を促進・強化することを目指しています。技術志向のコンピテンスセンターを設立し、気候変動関連の職業とその機会に焦点を当てたイメージキャンペーンによって若者を惹きつける必要があります。具体的な施策として、「褐炭地域における訓練クラスター4.0」が資金提供され、ブランデンブルク州、ノルトライン=ヴェストファーレン州、ザクセン州、ザクセン=アンハルト州において、褐炭部門の熟練労働者にデジタル化と持続可能性のためのスキルを教える、いくつかの産業別訓練クラスターが設立されます。

さらにBMWKは、より多くの外国人技能労働者を誘致することを目指しています。そのため、ドイツの持続可能な変革に貢献できる熟練労働者が容易に移住できるよう、法的障壁を低くし、行政手続きを簡素化・迅速化することが必要となります。

10. 技術開発を進める

太陽光発電のさらなる発展には、研究開発が不可欠です。そのためBMWKは、多接合太陽電池などの有望分野の研究開発に引き続き投資していきます。

産業研究と実験開発は、主に資金面で支援されます。エネルギー転換のための新技術やプロセスの実用化を加速するため、革新的なプロジェクトは実際の研究所で産業規模で実施されます。研究開発促進の戦略目標は、太陽光発電分野のダイナミックで競争的な環境に継続的に順応することです。

特に、生産技術のさらなる開発、部品やシステムレベルでの耐用年数の向上と品質保証、代替PV材料やコンセプトのさらなる開発、スマートセクターとの結合に向けた市場性のあるソリューションの開発と実証、新市場の開拓、健康や環境に有害な材料の削減や回避に焦点が当てられます。

11. 欧州の政策でもPVの急拡大を推進

欧州連合(EU)の加盟国として、また欧州電力市場の参加国として、ドイツのエネルギー部門の法的枠組みは、ますますEUのプロセスや要件によって決定されるようになっています。気候危機とロシアによるウクライナ侵攻を受け、EUは再生可能エネルギーの推進を加速させています。

EUにおける太陽光発電拡大のロードマップは、2022年5月のEU太陽エネルギー戦略で示されました。 同戦略では、加盟国に対し、(1)欧州ソーラールーフ構想の迅速かつ包括的な実施、(2)許認可手続きの迅速化と簡素化、(3)陸上再生可能エネルギーの専門性に関する大規模なEUパートナーシップの確立、(4)欧州太陽光発電連合(PVアライアンス)の設立などを求めています。

今後の見通し

太陽光発電戦略では、BMWKが太陽光発電を重視していることが強調されました。太陽光発電は経済的理由や気候変動対策として支持されているだけでなく、安全保障の観点からも重要です。

多くのステークホルダーがフィードバックをおこない、太陽光発電戦略の形成にかかわりました。その結果、報告書はおおむね好意的に受け止められました。しかし、多くの対策はまだ改良が必要であり、さらに戦略を拡大させることもできます。BMWKは、「ソーラーパッケージ I および II」を起草するため、さらなるフィードバックと協力を奨励しています。目標は、2023年7月の国会夏期休会前に最初のパッケージを閣議決定することです。ソーラーパッケージ I の立法プロセスが完了すれば、第2次パッケージの作業が開始され、2025年秋の現政権任期終了前に閣議決定されることが期待されています。

2026年までに年間22GWの太陽光発電を拡大するという目標を達成するためには、支援策を迅速に実施することが重要です。さらに、米国バイデン政権によるインフレ削減法は、国内生産に手厚いインセンティブを与えることで、太陽光発電メーカーを米国に誘致しています。スイスの太陽光発電メーカーであるマイヤー・バーガーは、2024年末までにドイツでの生産能力を3倍以上の340万kWに増強する計画でしたが、すでに、条件が整えば米国への移転もあり得なくはないと警告しています。ドイツとEUは、欧州の太陽光発電部門を再び浮上させることを真剣に考えるのであれば、法的枠組みを早急に改善し、太陽光発電メーカーに同様のインセンティブを提供しなければならないでしょう。

@energydemocracy.jp ドイツの太陽光発電戦略 ー 2035年に向けた太陽光発電導入の道筋/クリスティアン・ドート – https://energy-democracy.jp/5082 ドイツが、2030年までに太陽光発電の設備容量を3倍にするという目標を達成するためには、包括的な戦略が不可欠です。そこで経済・気候行動省は「 太陽光発電戦略」を策定しました。 #エネデモ #ドイツ #太陽光発電戦略 #営農型太陽光発電 #生物多様性PV #テナント電力 #共同発電消費モデル #agrivoltaics ♬ The Mood You’re In – I Am Robot and Proud

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環境エネルギー政策研究所(ISEP)リサーチアシスタント。ドイツ・マールブルグ大学で平和・紛争研究の修士号を取得し、現在、名古屋大学大学院環境学研究科博士課程在籍。再生可能エネルギーの社会的受容と、日本における営農型太陽光発電の社会政治的背景をテーマに研究に取り組んでいる。

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