中国躍進の秘密とテスラとの関係

「上海ショック」は終わりの始まり Part 2
2023年6月23日

4月18日~27日に開催された上海モーターショー以来、日本の自動車業界には「上海ショック」が吹き荒れているという1 自動車評論家 国沢光宏ブログ「自動車業界に上海ショックが吹き荒れている」2023年4月22日 日本のEVの遅れに関して、批判的な論調を控えていた国内のメディアも、さすがに今回は日本の立ち遅れへの危機感を伝えるようになった。

Part 1に続き、本稿では、近年、EV化が急激に進展した要因として、中国躍進の秘密とイーロン・マスク率いるテスラとの関係について解説する。

テスラCEOのイーロン・マスク(画像:AFP=時事)

中国の蓄電池の大量生産による産業化と価格低下

近年のEV化の急激な進展では、中国による蓄電池の大量生産の要素が大きい。これは、太陽光発電の歴史を後追いしている。太陽光発電も、わずか20年前には高コストだったが、中国が2000年代中頃からに大量生産による産業化に参入してから急速にコストが下がり、世界中で普及する原動力になった2 Gregory F. Nemet, “How Solar Energy Became Cheap; A Model for Low-Carbon Innovation”, Routledge 2019.

中国は、2010年以降、国策としてEV開発やリチウムイオン蓄電池の開発や生産を支援してきたことが実を結んでいる。特に、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)正極の蓄電池については、今のところ、中国が生産をほぼ独占している。

LFPは、発火や爆発の危険性が低いために安全性が高く、資源豊富な鉄を用いるため低コストで、充放電効率が高いものの、充電密度の低さが課題だったが、中国の研究開発と生産拡大による技術学習効果によって、実用可能なLFPが大量生産されはじめ、今やEV市場の約3分の1を占め、なお性能向上と価格低下が進んでいる。

その結果、今や中国は、世界のリチウム精製の約60%と過半を占め、EV向けのセル生産では56%を占めるに至った3Bruno Venditti, Oct.5, 2022, “The Top 10 EV Battery Manufacturers in 2022” Visual Capitalist

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Merkmal「EV = 走るコンピューター」が理解できない日本人! テスラ・中国勢がなぜ圧倒的躍進を遂げているのか、その根幹をまずは知るべきだ」(2023年5月21日)より一部転載

@energydemocracy.jp 中国躍進の秘密とテスラとの関係 – 「上海ショック」は終わりの始まり Part 2/ 飯田哲也 – https://energy-democracy.jp/5023 テスラが上海に工場を立地したことで、刺激を受けた中国各社が「ナマズ効果」による危機感と競争の激化で、一気に進化した。(「ナマズ効果」とは、競争がゆるい環境に強敵を放り込むと、もともと弱かった者が自分自身を強化して強くなる、という意味の故事) #エネデモ #ナマズ効果 #テスラ #車輪付きコンピューター #上海ショック ♬ How I Like It – Selecta J-Man

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1959年、山口県生まれ。環境エネルギー政策研究所所長/Energy Democracy編集長。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。原子力産業や原子力安全規制などに従事後、「原子力ムラ」を脱出して北欧での研究活動や非営利活動を経て環境エネルギー政策研究所(ISEP)を設立し現職。自然エネルギー政策では国内外で第一人者として知られ、先進的かつ現実的な政策提言と積極的な活動や発言により、日本政府や東京都など地方自治体のエネルギー政策に大きな影響力を与えている。

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