欧州の系統運営機関が「世界ではじめて」日蝕についての公式な見解を発表しました。これまで私たちはデータを見てきましたが、この発表では系統運営者が欧州全体でどのような取り組みをしているかが示されています。
系統運営者は数多くの予測をしなければならず、また、日蝕の前例がないため、どのように対処すればいいのか経験はほとんどありませんでした。彼らは、人々が日蝕を見るために外出するだろう、だから電力消費量は下がるだろうと仮定しました。一方で、暗くなるということは、より多くの人々が照明をつけるので、反対に電力消費量は増えるかもしれないとも考えました。さらに、太陽光発電は減るだろう – また、風力発電は太陽エネルギーの間接的な利用形態なので、一般的に日蝕のときは風力発電も約10%は減るだろうと考えました。
それぞれの系統区域をより独立させるため、高圧直流送電線での国際電力取引は18%減らして50%になりました。さらに、ファストリザーブ(10〜15分以内で即応する予備電源)は増強され、いくつかの事例では大幅にコストがかかることになりました – イタリアでは14万ユーロ、チェコでは21万5,000ユーロ、ドイツは飛び抜けて36億ユーロ。対照的に、フランスではわずか4万ユーロでした。
結果として、信じられないほどに安定した系統周波数が現れました – 下記の図では日蝕の形跡をまったく見ることができません(午前10:30ごろにピークがあります)。赤い線が標準的な周波数の帯域であることに注意して下さい。
50.5ヘルツ(下図の帯域の遥か上方)では発電設備は解列されます;同様に、49ヘルツ(下図の帯域の遥か下方)では、自動的に負荷制限がかかります。しかし、いくつかの古い太陽光発電は50.02ヘルツで自動的に解列されます。ドイツでは、ほとんどのシステムが改修されていますが(インバーターに新しいソフトウェアを導入)、ペーパーでは、ドイツにある4ギガワットの太陽光発電(全導入設備の約10%)がいまだに50.02ヘルツで解列されていると述べられています。その場合、ドイツでの太陽光の発電量の縮小は不必要に低い解列レベルの結果だということになります。
その日、英国はかなりの曇天だったので、影響はわずかなものでした。系統運営者は、揚水発電の最大容量を蓄えておき、それをすべて活用しました – それは異例の事態でした。ペーパーでは、日蝕が終わった後で人々が照明を消すのが遅かったことも付記しています。もしそうでなければ、残念ながら、ペーパーは、もっとも影響を受けたドイツとイタリアの電力会社が特別にどのような対応をしていたのかについて、十分な情報を提供していないことになってしまいます。ドイツでは、系統運営者が予防的な方法として産業にデマンド・マネジメントを要請していたことがわかっています。イタリアでは、系統運営者が大量の太陽光発電システムを解列していたことがわかっています。
このペーパーの内容にもとづいて考えると、理由はおそらく50.02ヘルツでの自動解列だったのでしょう – しかし、ペーパーではこの問題についての明確なコメントはありません。
元記事:Renewables International “ENTSO-E reviews solar eclipse”(2015年7月17日)ISEPによる翻訳