1990年代から初期の市場形成を牽引してきた欧州の自然エネルギー。その全体像をまとめたレポートから各国の動向を概観してみましょう。
世界の自然エネルギー市場は、1990年代以降、北欧諸国やドイツ、スペインなどEUの一部の国で先行して導入が進みました。2009年には気候変動対策のための温室効果ガスの削減目標値20%(1990年比)とあわせて、自然エネルギーが最終エネルギー消費に占める割合も20%という2020年の目標値がEU指令として定められました。
EU全体では、2020年の最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの目標値20%に対して、2014年の実績値は15.9%となっており、2013年の実績値15.0%から順調に増えています。電力消費量に占める自然エネルギーの割合については、2014年に28.1%に達し、日本の12%程度と比べて2倍以上高い水準にあります。
EU 28カ国の自然エネルギーの導入状況をまとめている年次レポート「The State of Renewable Energies in Europe: EurObserv’ER Report」の2015年版では、太陽光や風力などの発電設備の導入量や年間発電量だけではなく、太陽熱やバイオマスなどの熱利用、交通分野でのバイオ燃料などの消費量までを含み、さらに、それぞれの投資額、経済効果や雇用者数までを国別にまとめています(EU全体では110万人の雇用、1415億ユーロの売上高:2014年末までのデータ)。
もともと自然エネルギーの割合が高かったオーストリア、スウェーデン、ポルトガル、クロアチア、デンマークでは2014年には自然エネルギーが電力消費量に占める割合が50%以上になり、最も高いオーストリアでは約66%に達しています。
さらに、スウェーデンでは最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合が2020年の目標値である49%をすでに超えて53.5%に達しています。他にも、フィンランド、クロアチア、ルーマニア、リトアニア、ブルガリア、イタリア、チェコの8カ国が、それぞれ2020年の目標を超えました。
EU各国では、自然エネルギーの熱利用にも目標をもって積極的に取り組んできており、特に森林資源などを活用したバイオマスによる固体燃料(ペレット、チップ等)供給、熱電併給(CHP)や地域熱供給などで熱利用が進んでいます。
EU全体で自然エネルギーによる電力消費量で最も大きな割合を占めるのは水力発電(約4割)ですが、風力発電も3割近くを占めています。
風力発電では、ドイツが最も大きな設備容量(39GW)と発電量(57TWh)がありますが、スペインやイギリスがそれに続きます(図)。
イギリスは近年、風力発電が急成長しており特に洋上風力では導入量が最も大きくなっています。太陽光発電でも、2014年はイギリスでの新規導入量が2.5GWに達してもっとも大きくなりましたが、累積の導入量や年間発電量ではドイツが最も大きく、イタリアが続きます。
日本の自然エネルギーの発電量の内訳をみると、地熱発電や太陽光そして小水力の割合でイタリアに比較的近いことがわかりますが、イタリアではすでに全電力消費量の37%と、割合では日本の3倍のレベルに達しています。