蓄電池の充電サイクル数と相対出力の変化(出典:VDE)

蓄電池として使う中古車のバッテリー

2016年5月6日

中古車のバッテリーを蓄電池として系統につなぐ「セカンドライフ」に関する研究結果がドイツのエンジニア組織VDEにより発表されました。そのポテンシャルはとてつもなく大きく、手ごろな価格で手に入れることができる可能性があるようです。

VDEは最近発表した研究レポート(ドイツ語)で、廃車のバッテリーにはまだ80%の性能が残っているにもかかわらず、新しいバッテリーの50%しか費用がかからないことを取り上げています。プライマリーアンシラリーサービスに用いることで、その価値はさらに26〜33%高くなるでしょう。

ただし、この可能性を実現するには非常に多くの手間が必要となります。異なる製造業者によって作られるバッテリーの老朽化の度合いは(たとえ基本的には同じテクノロジーを使っていても)さまざまで、ひとつの蓄電システムにまとめることは簡単ではありません。そのため、ほぼ同じ性能をもつ再利用バッテリーを1つにまとめられるように、老朽化の度合いを検査する作業は念入りに行う必要があるでしょう。それに加え、再利用バッテリーの老朽化が進むのを可能な限り遅らせる必要もあるでしょう。

ドイツには4,400万台程度の車が走っており、そのすべての車に少なくともひとつはバッテリーがあるにもかかわらず、この研究では電気自動車とハイブリッド車のバッテリーに焦点を当てているのが興味深いところです。近年の文献の概要を調査したほとんどの研究から、ドイツが2020年までに電気自動車を100万台に増やすという目標を達成できる可能性は低いことが明らかになっているものの、2030年にはかなり異なった状況が見える可能性があります。2015年8月時点では、6,493台のプラグインハイブリッド自動車が走っているのと同時に、電気自動車は6,456台しか走っていません。

電気自動車の普及予測(出典:VDE)
電気自動車の普及予測(出典:VDE)

ここで忘れてはならない大切なことは、蓄電池が常に最低電圧まで放電し、再びフル充電になるのではないということです。むしろ、ここではアンシラリーサービスのために少量の放電と充電を行う短い位相について話しているのです(詳しくはYounicos社によるグリッド接続蓄電システムに関する前回の記事を参照)。

2014年のドイツでは、新規に登録された車の約2倍にあたる814万台の従来型の車が登録されなかったという奇妙に思える変化があり、ドイツの自動車産業は明らかに10%近く縮小しました。しかし、その数字を見れば、どれだけの鉛蓄電池が利用可能なのかはわかります。とはいえ、蓄電池を再利用する可能性は明らかに限られており、この研究では電気自動車に使われているリチウムバッテリーに焦点を当てています。この研究によると、価格を除けばリチウムイオンバッテリーは鉛蓄電池より「かなり多くの利点」があり、今後のリチウムイオンバッテリーが大量に現れることで、再利用蓄電池のポテンシャルが高まると、基本的に前向きに捉えられています。従来型の車にはひとつの鉛蓄電池しかありませんが、電気自動車はそれよりはるかに多くの蓄電容量があるため、電気自動車1台で従来型の自動車12台分の再利用蓄電池のポテンシャルを生み出すことを覚えておいてください。

蓄電池の充電サイクル数と相対出力の変化(出典:VDE)
蓄電池の充電サイクル数と相対出力の変化(出典:VDE)

バッテリーは第1のライフサイクルで約800回フル充電され、それまでにバッテリーの容量は最初の80%にまで下がります(グラフ内の灰色×印)。再利用バッテリーはそこから始めてさらに200回のフル充電が行われます。しかし、その時点のバッテリーは完全な充放電ではなく、系統にアンシラリーサービスを提供するために絶えず少しずつ充放電するので、時間枠が長くなっていることに留意が必要です。

おそらくもっとも興味深いのは2010年の使用済みバッテリーの概要に関するグラフです。最も多い(トン単位)のはUPS(uninterruptible power supply(無停電電源装置)- ドイツ語ではUSV)システムです。2位の29.3%はあまり話題になることのない車両であるフォークリフトです。これらの機械は一般的に室内を走り(そのため排ガスは大きな問題)、長距離をカバーする必要ありません(そのため充電ステーションの範囲や供給力は問題になりません)。電車の車両は合計しても12.3%にしかなりません。

2010年の使用済み蓄電池の数(トン)と構成(出典:VDE)
2010年の使用済み蓄電池の数(トン)と構成(出典:VDE)

この研究は156ページもあるため、私がここで評価を下すことはもちろんできません。もしドイツ語が分かるようであれば、ご自身でご確認ください!

(クレイグ・モリス/@PPchef

元記事:Renewables International “Using old car batteries for power storage”(2016年2月17日)ISEPによる翻訳

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