ドイツ連邦統計局(DeStatis)が2014年のドイツの電力の国際取引統計を公表しました。その結果は、ドイツが再エネ電力を隣国に不当に安い価格で販売していると批判している人たちにとっては説明が難しいものとなりました。
3月半ば、ドイツのタブロイド紙Bildは、ドイツはそんな必要はないにもかかわらず、グリーン電力を「プレゼント」しているという、いつもの根拠の無い主張を繰り返しました(詳細は下記のスクリーンショットを見てください)。
デンマークと異なり、ドイツは今までに再エネ給電量が電力供給の100%を超えたことはないため、この主張はあたりません。さらに、電力の輸出価格と輸入価格の平均値をより詳しく見てみると、ドイツは電力取引で利益をあげ続けていたことがわかります。ただし、2014年についてはほぼ均衡していました。
2012年と2013年は、ドイツから輸出される電力(kWh)の平均価格は、輸入電力(kWh)の平均価格より約6%高くなっていました。しかし、最新の統計値によれば、2014年の電力の輸出価格と輸入価格の差はわずかに2%でした。
電力国際取引の議論は停電の回避に焦点が当たりすぎているように思われます。実際は、電力はそのほとんどが価格に反応した取引されています。明らかに、ドイツは電力価格が相対的に隣国より低い時間帯よりも高い時間帯により多くの電力を輸出し続けています。ただし、昨年の利益の減少が示しているように、この状況は徐々に変化していくかもしれません。
もう一度確認しましょう。ここでは物理的電力流量のみを示しており、商業取引実績は無視しています。例えば昨年、物理的取引量のレベルを見る限りドイツは多くの電力をフランスから調達しているように見えますが、フランスはドイツからの電力の純輸入国でした。
以上の仮定と、電力取引は停電を避けるために行われているという誤解を総合すれば、なぜ「ドイツは停電を回避するためにフランスの原発からの電力を必要としている」と主張する人がいるのか、理解できるのではないでしょうか(例えば上述のBild紙の記事も「隣国(フランス)は原発の新設を望んでいる」と主張しています)。実際には、フランスはドイツ南西部のグリッドを利用してスイスに電力を売っています。最新の知見では「物理的にはフランスが輸出する電力の大部分はドイツに流れていますが、実際のところは電力をスイスへ中継している」ということが示されています(PDF)。
もし、そうではなくて、データが商業取引実績を反映していたならば、ドイツが特に取引する必要のあるものについて、より良い視座が得られるでしょう。しかし、私たちが目にしている物理取引量のデータは、ドイツ以外の国の間で取引され、ドイツ国内は物理的に通過していくだけの電力も含まれています。電力はこの場合、国境の向こう側の道路が渋滞しているためにドイツ国内の近場の道路を走る運送トラックに似ています。
ベルギーはドイツと国境を接しているにもかかわらず、上の表では二国間の直接的な電力取引はなかったとされています。そのため、ベルギーがドイツから輸入している電力はオランダおよびフランスを経由して流れていることになります。
過去2年にわたり、このテーマについて書いてきたのは私一人でした。そのため、昨日机に向かってこの記事を書きはじめた時、誰もこのことについて書く人はいないだろうと思った私はもう一日待つことにして、最近の太陽光発電の記録についての記事を書くことにしました。これは結果的に大間違いでした。その日の終わりにシュラント(Schlandt)氏が電力輸出入についての記事をファーゼンプリュ-ファー(Phasenprüfer)に公開しているのを見つけてしまいました(しまった!)。彼は売上に焦点を当てていました。昨年ドイツは電力取引において(2013年をわずかに上回り)純電力輸出の記録となる17億5000万ユーロの売上を記録しました。なんて多くの「電力を必要ないにもかかわらずプレゼント」してしまったのでしょか・・・。
元記事:Renewables International, German electricity exports still more valuable than imports(2015年4月21日)ISEPによる翻訳