Agora:2014年の再生可能エネルギーの成長は、2025年までに再生可能エネルギーの導入割合40〜45%を目指す政府の目標幅に収まった。

報道されていないドイツの法律変更

2015年2月10日

ドイツの再生可能エネルギー法のほんの小さな変更が理屈の上では大きな影響を与えるかもしれません。これは国内の「電力消費量」と「純輸出を含む総発電量」の違いに関わる問題です。

昨日、ベルリンを拠点とするシンクタンク Agora Energiewendeが暫定データをもとに2014年末までのドイツの電力部門の概要を提示しました。これには以下のグラフが含まれています:

Agora:2014年の再生可能エネルギーの成長は、2025年までに再生可能エネルギーの導入割合40〜45%を目指す政府の目標幅に収まった。
Agora:2014年の再生可能エネルギーの成長は、2025年までに再生可能エネルギーの導入割合40〜45%を目指す政府の目標幅に収まった。

私は、Agoraが再生可能エネルギーの目標値を「総発電量(または正味発電量)」ではなく「総電力消費量」の割合で表現することになぜこれほどまで確信をもっているのか、不思議に思います。いずれにせよ、現在の目標幅をはじめて採用した2012年の再生可能エネルギー法(ドイツ語PDF)の1.2節では「電力供給(Stromversorgung)」における再生可能エネルギーの割合は2050年までに「少なくとも80パーセント」に増えると述べており、曖昧な表現をしています。

そこで、2014年の改訂版(ドイツ語)を見てみました。まさにその表現は変更されていました − 今度は再生可能エネルギーは「少なくとも80パーセント」の「総電力消費量」を占める、となっています。(2つの形容詞 “stetig [継続的に]”とkosteneffizient [手ごろな]も追加されていましたが、今回の件には関係ありません)

政府による2010年のエネルギーコンセプト(ドイツ語PDF)では再生可能エネルギーの導入割合はBruttostromverbrauch(総電力消費量)に応じて成長するとより明確に述べているため、2012年時点の法律では総電力消費量は「電力供給」と表現されていたと推測できました。しかしここで問題なのは、再生可能エネルギーの割合を消費量で計算するのは発電量で計算するほど簡単ではないということです。

現在電力の主要な純輸出国(電力の輸出は2014年にさらなる記録レベルで増加)であるドイツでは発電量と電力消費量の差が拡大しています。2014年には輸出量が総発電量の約7パーセントを占めました。

昨年2月に、私はドイツの電力会社によるロビー団体BDEWが、総発電量ではなく、国内需要量(つまり消費量)に占める再生可能エネルギーの割合を計算する際に、どのようにしてその割合を増やしたのかについて書きました。その前提は、再生可能エネルギーは需要ではなく天候に応じて生産され、その電力はいずれにせよ生産されるということです。言い換えれば、電力の輸出は従来型の発電を直接的に増加させるものであり、再生可能エネルギーは国外の需要に応じて生産されるものではないということです。

これまでのところはとても単純で、理論的には再生可能エネルギー電力が国内需要をカバーすることができると、今のところ言うことができます。しかし、再生可能エネルギーの発電量が需要の100%を超えるようになると、その理論が通用しなくなります。昨年、需要に対する再生可能エネルギーの割合は73%しかありませんでした。しかし、これから10年以内に再生可能エネルギーの発電量が需要を上回ることが起こるようになります。その時、再生可能エネルギーがすべて国内で消費されるとは言えなくなるでしょう。そして、2050年までには、再生可能エネルギー発電のピークが需要の100%を超えるのはあたりまえのことになります。

つまり、現在の法律で示されている方法ではドイツの目標値を計測することでさえ技術的に不可能です。また、例えば2014年の電力系統開発計画で期待されているように、電力輸出が増加し続けるのであれば、需要に占める石炭発電の割合を排除してしまうことになるでしょう。

言い換えると、電力輸出を計算に入れなくなることで、石炭による発電はドイツ政府にとって再生可能エネルギーの目標達成にもはや問題ではないということです。国内需要を減らし続け、再生可能エネルギーの発電量を増やし続け、輸入が拡大し続け、輸出のおかげで石炭発電は安定を保ったまま − もし輸出を考慮しない国内需要という観点で再生可能エネルギーの目標値を定義するなら、ドイツは簡単にその目標に到達できるでしょう。

炭素排出量についてはもう少し複雑になります。再生可能エネルギー法は炭素排出量について目標値を設定していません。2010年のエネルギーコンセプトでは単に「温室効果ガスの排出量」について語っており、2006年の国家行動計画(National Action Plan ドイツ語 PDF)等、他の関連文書と同じです。ここでは、単に総生産量のことを意味しているにすぎません。EU域内排出量取引制度(EU ETS)は消費量ではなく生産量が基になっており、おそらく輸出量も含まれているでしょう – したがって基本的にドイツの再生可能エネルギーの目標値は消費量が測定基準であり、排出量は別の測定基準(生産量)に基づいています。

何もかも混乱した状態に見えます。しかし、私が何かを見落としているだけかもしれません − 自由にコメントをお寄せください。

クレイグ・モリス@PPchef

元記事:Renewables International,The underreported change in German law(2015年1月5日)ISEPによる翻訳

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