地球規模の太陽文明の到来

2023年9月15日

私たちは今、世界のエネルギーシステムにおける大きな転換局面の真っただ中にいます。今後20年以内に、化石燃料システム全体が崩壊し、まったく異なる技術(主に太陽光と風力)にもとづく新しいエネルギーシステムが優位となります。前回の投稿1翻訳:ナフィーズ・アーメド「世界のエネルギーシステムの変革が止まらない理由」Energy Democracy 2023年8月30日では、科学的な予測研究を深く掘り下げ、このディスラプションがもはや止められないことを実証的に証明しました。

写本から印刷機、馬から自動車、固定電話からスマートフォン、紙の新聞からインターネットまで、歴史上のさまざまなテクノロジーディスラプションが転換点を通過してきたように、世界の太陽光発電と風力発電の普及は、基本的な経済的要因に後押しされ、転換点を通過したようです。

このようなテクノロジーディスラプションは、同じシステムの中で新しいテクノロジーを旧いテクノロジーと置き換えるような、単なる一対一の代替ではありません。システムそのものを定義するルールや構造そのものを変えてしまうのです。新しいルールや構造を生み出し、それが新しいシステムの出現につながります。

だからこそ、これから起こることは、ある製品群を新しい製品群に置き換えるという直線的なものではなく、エネルギーシステムが根こそぎ変容することなのです。

しかし、この変容の正確な性質は定まったものではなく、私たちは化石燃料システムとはまったく異なる新しい方法で社会の限界と可能性を再定義することとなり、それは私たちの選択次第で変わってきます。

変化の範囲

今起きていることは「相転移(phase transition)」です。これは単なる抽象的で高尚な理論的概念ではなく、今日の変化のダイナミズムとその中での私たちの役割を理解するのに役立つ具体的な意味を持っています。

相転移は自然界ではどこにでもあり、物理学的および生物学的なシステムで見られます。相転移は、外的条件や圧力が変化した結果、システム内の組織の度合いが急激に変化することによって、システムが根本的な状態変化を起こすときに発生します。

このような物理的・生物学的システムがどのように組織化されるかは、それらを構成する物理的な力と、それらを取り囲む物理的な力との相互作用に依存しています。例えば、水の温度が急激に上昇すると、分子間の関係が不安定になり、液体からまったく異なる性質を持つ気体へと「相転移」します。

つまり、「相転移」の性質は、(1)既存のシステム内のさまざまなモノの性質、(2)それらのモノが内部でどのように関係しているか、(3)そのシステム全体が周囲の条件とどのように関係しているか、によって決まります。

液体状態の水のシステムは、ある一定の外部条件に適応しているように見えるかもしれません。そのレベルでの挙動は、一定のパラメーターの範囲内ではかなり予測可能であるように思われます。しかし、例えば急激な温度上昇によって、これらの条件が急激に変化した場合、システムの内部関係に劇的かつ根本的な変化が生じます。そこに現れるのは、以前とはまったく異なる気体系であり、以前とはまったく異なる性質を持っています。それは、液体の状態での水の挙動を見ただけでは理解できなかった特性です。

あるシステムの「相(phase)」について話すとき、基本的には、そのシステムがどのように組織化されているかについて話しているのであり、その振る舞いを定義する「ルール」と「特性(properties)」を推論することによって捉えることができます。相転移を通過するシステムは、まったく新しいルールと特性を持つ新しい「相」が出現するため、そのルールと特性の変容を経験します。

エネルギーシステムの変容を相転移として認識することは、いくつかの重要な点を認識する上で役に立ちます。

  1. スピードが加速する:水を沸騰させるとき、最初は長い時間待っているように思うかもしれません。しかし、突然ティッピングポイントを突破し、いつの間にか沸騰し、蒸気が出てきます。
  2. 私たちの選択が、新しいエネルギーシステムの最終的な構造に対して根源的な役割を果たす:というのも、私たちはシステムの主要な「単位(units)」であり、私たちの決断はシステムの状況に大きな「影響(forcings)」を与えるからです。つまり、大きな変化を促す大きな力学が数多く働いている一方で、私たちの選択は、システムがどのように進化するかを決定する上で大きな役割を果たすことになるのです。
  3. 私たちの選択は、システム全体を左右するため、非常に大きな影響力をもつことになる:システムが均衡している状態では、トップダウンのシステム制約が大きいため、変化の余地はあまりありません。しかし、システムが相転移期にあるとき、旧いシステムが死滅すると、そのルールと特性をもつ旧い秩序が崩壊し、システムはコントロールを失います。これにより、新しいルールや新しいダイナミクスを生み出す、つまり主体性(agency)を発揮するための、はるかに大きな変化の余地が生まれます。以前は考えられなかったような、遥かに大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
  4. しかし、旧いシステムが死んでいくだけではなく、新しいシステムが出現する:エネルギーシステムの変容は、特定のテクノロジーが指数関数的に向上し、旧来のテクノロジーを凌駕しているという事実にもとづいています。これらのテクノロジーは、以前のものとは異なる特定の特性をもっています。つまり、この相転移の反対側に無傷で到達するためには、これらの新たな特性を最善の方法で活用し、このプロセスを通じて規模を拡大する必要があります。そのためには、可能な限り特性を理解し、より多くの情報にもとづいた選択をする必要があります。相転移が加速するにつれて、私たちは、新たに発見した卓越した影響力を使って、新たなシステムのポジティブな可能性を最大化・最適化する一方で、ネガティブな影響や制限を最小化・縮小するような設計上の選択をおこなうことができます。

では、この新興システムの重要な特性とは何なのでしょうか?

クリーンエネルギーシステムの新たな可能性を理解するために、私たちが活用できる科学的な文献が数多く存在します。

本稿では、こうした文献のいくつかをまとめて、この新たなエネルギーシステムに関する実に明確で力強いイメージをお伝えしようと思います。それは、この相転移に適応し、人類と地球にとってもっとも有益な方向へ推進していくための道筋を示す一助となるでしょう。

超大量導入する

従来のアナリストは、再生可能エネルギーの容量が指数関数的に増加するにつれて、太陽が照っていなかったり風が吹いていなかったりする時間帯に保存したり利用したりするのに十分なエネルギーを確保するための貯蔵の必要性も高まる、という考えを繰り返しています。

しかし、このグラフは、再生可能エネルギーを100%まで漸増させたときに何が起こるかを示しているに過ぎないことにお気づきかと思います。しかし、100%を超えると、貯蔵の必要性が指数関数的に減少することを示す研究が、現在、多数現れています。貯蔵はシステムの中でもっとも高価な部分であるため、これは極めて重要です。

今年はじめ、国際エネルギー機関(IEA)は、こうした研究の一部をまとめた画期的な報告書を発表しました。

この新しい技術報告書は、IEAの太陽光発電システム研究協力プログラム(PVPS)によって発表されました。IEA PVPSには、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、モロッコ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、タイ、トルコ、米国、欧州委員会、ソーラーパワー欧州、スマート電力アライアンス(SEPA)、太陽エネルギー産業協会、銅アライアンスの専門家が参加しています。

2023年2月に発表されたこの報告書は、複数の研究チームによる査読済みの豊富な科学研究を総合したものです。研究の大半は、クリーンパワーリサーチのマークとリチャード・ペレスが主導しています。

2013年から2022年までに発表された約20本の論文は、「安定した発電(Firm Power Generation)」と題されたIEAの報告書にまとめられています。それによると、太陽光、風力、蓄電池は、「地球上のほとんどどこでも」1日24時間、1年中クリーンな電力を供給することが可能であり、「すべての従来型電源に経済的に完全に取って代わることができる」と述べられています。

この報告書のケーススタディは、アメリカ、欧州、オーストラリアのさまざまな地域に焦点を当てています。いずれも、再生可能エネルギーシステムがもっとも低コストで、継続的に電力を供給できるようになるために必要な主要方策を明らかにしています。

そして、もっとも重要なことは、報告書が「暗黙の貯蔵(implicit storage)」と呼ぶものです。報告書はこれを次のように説明しています。

“ もっとも重要なことは、そして直感に反することだが、変動型再生可能エネルギー(VRE)電源を過剰に導入し、積極的に抑制することが、変動から固定(variable-to-firm)への変換となるのである。過剰導入(overbuilding)とは、エネルギーベースで負荷要件を満たすために必要とされるよりも多くのVRE電源を導入することである。VREの生産が過剰な場合(生産が需要を上回り、貯蔵備蓄が満杯の場合)、この過剰なVRE電源は動的に抑制される。

IEAによれば、暗黙の貯蔵とは、太陽光発電と風力発電を過剰に導入することであり、ほとんどの場合、既存の需要の少なくとも3倍になります。これにより、貯蔵容量を大幅に(90%も)減らすことができます。

蓄電池であれ、その他の形態であれ、実際の蓄電はシステムの中でもっとも高価な構成要素です。そのため、太陽光や風力による発電電力量を「過剰導入(overbuilding)」または「超大量導入(supersizing)」することで、必要な「真の貯蔵(real storage)」の量を減らし、システムコストを大幅に削減することができます。報告書では、このことを以下の図で示しています。

出典:IEA PVPS, 2023

緑の部分は「暗黙の貯蔵」で、太陽光発電(PV)を「過剰導入」することで生じます。太陽光発電が増えれば増えるほど、必要な「真の貯蔵」の量は少なくなります。そして、必要のない余剰電力を「抑制(curtail)」します(基本的には出力を意図的に下げることを意味する)。これはどのように機能するのでしょうか?

まず、再生可能エネルギーは1つだけでなく、さまざまなものがあります。つまり、太陽光と風力は補完し合うものであり、ほとんどの地域では互いをかなり補い合うことができます。

第二に、地理的に分散させる必要があります。このアプローチは、たとえば1世帯に1基の太陽光発電所を設置するような場合には機能しません。もっとも多くの資源を活用でき、余剰エネルギーが不足したときに必要に応じてある地域から別の地域へと移すことができるような、より広い地域システム全体で機能します。

第三に、これらの変動型再生可能エネルギー源からシステム全体へのエネルギーの流れを、需要の変動にもとづいてインテリジェントに管理できる、スマートでうまく接続された送電網が必要になります。

抑制ではなく超大量導入

なお、IEAが提唱する「暗黙の貯蔵」という概念があまりにも限定的であることを示す良い研究もあります。余剰電力を利用できるのに、なぜ「抑制」するのか?

IEAのPVPSが定義する暗黙の貯蔵は、余剰電力を計画的に排除することを前提としています。しかし、システムが現在の需要の約3倍を発電するように超大量導入された場合、「限界費用ゼロ」で大量の余剰電力が生産されることになります。

限界費用ゼロとは、電力を追加生産しても追加費用がかからないことを意味します。いったん再生可能エネルギーシステムが建設されれば、その建設コストは1~4年で回収されるだけでなく、30年もの長きにわたって存続します。つまり、超大量の再生可能エネルギーシステムの寿命の大半は、現在の3倍のエネルギーを無料で生産していることになります。

多くの研究者が、このような余剰電力は抑制するのではなく、新たな用途に使うべきだと指摘しています。

2013年、スタンフォード大学の科学者チームは、英国王立化学会の学術誌 Energy & Environmental Science 誌に、抑制のエネルギー投資利益率(EROI)の意味を論じた論文を発表しました。その結論のひとつは、社会は余剰電力を廃水処理、海水淡水化、灌漑などの重要なサービスに積極的に利用できるというものです。

貯蔵されたり抑制されたりする可能性があった風力や太陽光の電力を、他の用途に使うことはできないのか、と問うことには意味があります。例えば、余剰電力は、オンデマンド電力へのニーズが低く、間欠性によるデメリットが大きくない用途、例えば、海水の脱塩や浄化、灌漑用ポンプの駆動などに利用することができます。このような条件下では、高いEROIのグリッド値が得られ、送配電部門を超えた社会的利益をもたらす可能性があります。正味エネルギーの分析、経済学や環境スチュワードシップを含むその他の観点からのさらなる研究を進め、抑制される運命にあるエネルギーの追加的・代替的な利用法を探るべきです。

2020年、RethinkXによる画期的な報告書 Rethinking Energy 2020-2030: 100% Solar, Wind, and Batteries is Just the Beginning は、これらの結論をさらに推し進めました。この報告書では、再生可能エネルギーシステムのもっとも最適でもっとも低コストの設計には、需要の3倍から5倍の太陽光発電と風力発電を導入することが必要であり、これによって蓄電池の必要量を大幅に削減できるとしています。

この設計は、世界のほとんどの人口密集地域の気候に適用可能であり、1年のほとんどの日に大量の余剰電力を生み出します。

“ 新たなシステムのもっとも直感に反する驚異的な特性のひとつは、全体としてはるかに大量のエネルギーを生産すること、そして、この超豊富なクリーンエネルギー出力(私たちはこれをスーパーパワーと呼んでいます)が、ほぼすべての人口密集地で1年の大半を通じて限界費用ゼロに近いコストで利用できることです。

出典:RethinkX, Rethinking Energy, 2020

この過剰な電力を抑制しようとするのではなく、「スーパーパワー」の出現によって、多くの分野や産業の電化が可能になります。

“ スーパーパワーの応用例としては、道路交通や暖房の電化、海水淡水化と浄化、廃棄物処理とリサイクル、金属製錬と精製、化学処理と製造、暗号通貨のマイニング、クラウドコンピューティングと通信、炭素除去などが挙げられます。

このような超豊富な限界費用ゼロの電力は、法外な化石燃料のエネルギーコストと投入を排除する前例のない機会を提供することで、重工業に変革をもたらす可能性があります。

セクターおよび国境を越えた相互接続

再生可能エネルギーシステムの効率を高めるもうひとつの重要なアプローチは、セクターや国境を越えて相互接続されるようにすることです。

従来、電気・暖房・冷房・輸送・産業消費は、完全に別々のセクターでした。「セクターカップリング」という考え方は、これらのセクターを統合し、可能な限り電力に変換することで、エネルギーがセクター間を流動的に移動できるようにするものです。大量電化とセクターカップリングの組み合わせは、100%再生可能エネルギーへの移行を加速させ、同時に電気料金を現在より大幅に安くできることが、研究によって示されています。

もうひとつの補完的なアプローチは、国境を越えた送電線の接続を追求し、地域間、国家間、さらには全地域や大陸間でのエネルギーの伝送と共有を促進することです。

バーミンガム大学電子・電気・システム工学科の科学者が2021年に発表した研究論文によると、超高電圧直流送電を利用することで、グローバルに相互接続された電力網を構築できることが示されています。このシナリオでは、需要の変動に応じて、インテリジェントな方法でエネルギーを迅速に共有し、国境を越えて伝送することができるとされています。このようなグローバルで相互接続された送電網によって、国や地域を越えて、異なる時間帯の異なるニーズにもとづいてエネルギーを共有することが可能になります。

この研究では、間欠性を解決する方法として、発電設備容量の超大量化の可能性は考慮されていません。それでも、世界的な送電網の相互接続によって、蓄電池の必要量を純粋に50%削減できることがわかっています。

両方を実現するとどうなるのでしょうか? 太陽光発電と風力発電の導入を超大量化することで、貯蔵の必要量を90%も削減することができます。つまり、超大量化と再生可能エネルギーシステムのグローバルな相互接続を組み合わせることで、貯蔵の必要量をほぼゼロにできる可能性があります。つまり、システムがまだ構築されていない移行期には蓄電の必要性は重要ですが、システムがより完全に開発され、世界規模で最適化されるにつれて、その重要性は低くなる可能性があります。

サーキュラーエコノミーと炭素隔離

太陽光発電と風力発電の導入規模を拡大することの重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。超大量化は、もっともコストがかかり、物質的にも集約的なシステム構成要素である貯蔵を削減するカギとなります。それはまた、材料が永久にリサイクルされる「サーキュラーエコノミー」のコストを劇的に削減できる、クリーンエネルギーの超豊富なシステムを構築するカギでもあります。

スイス連邦材料科学技術研究所の科学者たちの研究によれば、このシステムを世界規模で超大量化すれば、現在の需要の10倍もの電力を生産することができます。その余剰電力は、サーキュラーエコノミーを含む多様な新しい用途に使用することができます。

現在のシステムが30~50年後には劣化し、最終的には完全に置き換える必要があることを考えると、もちろん新しい材料の投入が必要になります。しかし、限界費用ゼロに近い状態でかなりの「スーパーパワー」を生み出すシステムでは、材料の厳格なリサイクルをともなう新しいエネルギー集約型産業の電力を安価かつクリーンに供給することが可能になります。重工業、製造業、リサイクルを「スーパーパワー」に引き渡せば、化石燃料に依存した現在のシステムでは不可能な、前例のないほどの安価でサーキュラーエコノミーが実現可能となるのです。

スイスの科学者たちによる研究はまた、このような限界費用ゼロのクリーンエネルギーが超豊富になれば、「スーパーパワー」を使って電力を供給することが可能となり、直接空気回収(direct air capture)のような、現在は高価で無益な炭素隔離技術が経済的に実現可能になることを示しています。

Environment Research Letters誌に発表された、太陽光発電への急速な移行の見通しに関する論文の主執筆者であるハラルド・デジングは、超大量化を前提としています。

“ 長期的に気候を安定させるには、大気中のCO2濃度を350ppm以下にまで下げる必要がある。太陽光発電の過剰導入は、この課題にとって理想的であり、DACS(直接空気炭素回収・貯蔵)を稼働させることで、日照時間のピーク時や、遊休設備が利用可能な夏季に対応することができる。

つまり、気候変動危険地帯から脱出するための最良の望みは、いずれにせよ、私たちが突入する可能性が高い、これまでに述べた設計経路にそってクリーンエネルギーへの転換を加速・最適化することなのです。化石燃料が完全に代替されれば、化石燃料の排出をなくすだけでなく、大気中の炭素の取り出しを加速させることができるのです。

豊かさを分かち合う、かつてない可能性の空間

この研究は、世界的なクリーンエネルギーシステムの設計には最適な道筋があることを示しています。しかし、そのような道筋を進むには、あらゆる段階で適切な意思決定が必要となります。それは、自動的におこなわれる決定でもなければ、テクノロジーによって必要とされる決定でもありません。これらのテクノロジーの性質は、よりネットワーク化された設計の道筋を示唆している一方で、その最適な展開には、人類と地球との調和的な関係を根本的に支持する価値観や倫理的なコミットメントに根ざした意思決定が必要となります。

新しいシステムは、適切な選択をすれば、少なくとも30年間は限界費用ゼロに近い状態で、化石燃料システムで現在生産している以上のエネルギーを生産することができるでしょう。本質的に中央集権的で独占的傾向のある化石燃料とは異なり、再生可能エネルギー、特に太陽光発電の性質と設計は、個人、家庭、地域社会、企業、町、都市による分散型所有に適しています。

この豊富でクリーンなエネルギーは、グローバルな相互接続を通じて、家庭、地域社会、国家、地域間でインテリジェントに共有・管理されるでしょう。このグローバルシステムでは、エネルギーは独占されるのではなく、国境や境界を越えて分配されます。

一度建設されたシステムは何十年も使用されるため、化石燃料システムのように物質処理量が増え続けることはなく、システムの寿命が尽きるまで発電を続けるために新たな物質投入が必要とされることもないため、物質処理量は劇的に減少することになります。新しいテクノロジーに必要な材料投入量と採掘量でさえ、化石燃料システムより劇的に少ないのです(正確には300分の1)。

スーパーパワーを活用し、素材の再利用という真のサーキュラーエコノミーを実現するために適切な設計を選択すれば、このシステムは自己再生も可能になります。すべての重工業と製造業が電化されることで、新たな太陽光発電と風力発電、そして蓄電池をつくることが、「スーパーパワー」を使って可能になるからです。

つまり、人類史上初めて、物質的な処理能力を劇的に低下させながら、地球規模で集団的かつ知的に共有され、すべての人に豊富なエネルギーを供給できるシステムになるのです。

これは、今日私たちが使っているような従来の二元的な指標や定義でそのダイナミクスを捉えられるようなシステムではありません。従来のGDP成長の定義にも、脱成長の概念にも当てはまりません。実際、新しいエネルギーシステムが導入され、エネルギー生産に対する所有権がますます分散化されるにつれて、世界経済の基本的な構造も変容していかなければならないことが明らかになっています。このシステムでもっともうまく機能する価値観と世界観は、協力、思いやり、人々の結束を前提とするものです。

しかし、この最適なシステムは自動的に出現するものではありません。以前の記事2 ナフィーズ・アーメド「世界のエネルギーシステムの変革が止まらない理由」Energy Democracy 2023年8月30日 で指摘したように、この新たなグローバルソーラーシステムは、放っておいたらゼロカーボンにならず、ましてや上手く設計されたものにもならないでしょう。そのため、必要以上にコストをかけたとしても、気候危機を解決できないまま終わる可能性があります(最低でも2℃に向かう可能性があることを示す証拠があるにもかかわらず)。化石燃料産業が座礁資産となり、経済が大混乱に陥る中、新システムは旧システムと競合し、適切に導入されることなく旧システムに取って代わられるかもしれません。その結果、経済的にも生態学的にも崩壊しやすい、最適とはいえないシステムが生まれる可能性があります。

適切な第一歩は、本当に可能なことは何なのかを理解することです。本稿で取り上げた科学的研究は、気候の安定性を回復させながら、エネルギー貧困をなくす力を与えてくれる、真に持続可能で豊かなエネルギーシステムをどのように構築できるかを示しています。この認識をもって、私たちは次のエネルギーシステムが出現したときに、その恩恵を加速させ、最大化し、分配するために協力しはじめることができるのです。

元記事:Nafeez M Ahmed “The Coming Dawn of a Global Solar Civilisation Age of Transformation, July 10, 2023. 著者の許可のもと、ISEPによる翻訳

@energydemocracy.jp 地球規模の太陽文明の到来/ナフィーズ アーメド 世界の太陽光発電と風力発電の普及は、基本的な経済的要因に後押しされ、転換点を通過しており、このディスラプションはもはや止められません。テクノロジーディスラプションは、新しいルールや構造を生み出し、それが新しいシステムの出現につながります。 #エネデモ #テクノロジーディスラプション #ナフィーズアーメド #ageoftransformation #超大量導入 #過剰導入 #スーパーパワー #フェイズシフト #相転移 #暗黙の貯蔵 #サーキュラーエコノミー ♬ Dawn on the Side – Nujabes

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