2015年5月、Beinn Ghrideagウィンドファームの建設が完了しました。今後、数ヶ月以内に、3メガワットの Enercon社製の風力発電機3基が発電を開始する見込みです。最近ドイツで完成した市民プロジェクトとの比較が良い参考になります。
合計出力9MWというこのプロジェクトはきわめて小規模です。ドイツではこの約9倍にもなる市民風力発電所が最近完成しましたが、国内最大規模として称賛されることはありませんでした。EUであれば、この約2倍の規模のコミュニティプロジェクトでさえ入札なしで建設を許可したでしょう。また、この風力発電の実現には長く時間がかかりました。Sun & Wind Energy誌に携わる私の同僚が指摘しているように、この計画は10年前にはじまっていました。さらに言うと、このプロジェクトはイングランドではなくスコットランドで立ち上がったものです。スコットランド政府は再生可能エネルギーだけではなく、コミュニティの所有も促進したいと考えています。この2国はきわめて近接しているにもかかわらず、イングランドは市民が風力発電所を所有することによる恩恵にまだ気付いていないのです。
このプロジェクトの費用については相反するレポートが出ています。昨年のある記事では資金調達額が11億ポンドとなっていましたが、その数字は明らかに銀行の融資のみを表しており、資本金は表されていません。もう一つのプレゼンテーション(PPT)では借入金が13.7億ポンドとなっていますが、こちらも資本金が含まれていないようです。このプレゼンテーションでは予想年間利益が1.4億ポンドとなっていますが、これは借入金の10パーセントを上回ることになります。
しかし、資本金の大きさ次第でプロジェクト全体の総額はさらに高くなり、それによって利幅は下がることになります。不思議なことに、市民からの出資額に関するデータは見つけることができませんでした。昨年のレポートでは投資ファンドによる資本金について述べています。2009年の事業計画(PDF)によると、このプロジェクトでは外部の投資家が地元主体に利益を寄付しているように見えます。この計画を作成した企業から追加情報を依頼してまだ回答を受け取っていませんが、何かが得られたらここに掲載するつもりです。
先日指摘したように、英国の政策は風力発電に対して大幅に支払いすぎています。この風力発電は36パーセントの設備利用率が期待されており、明らかにすばらしい風況の立地にあります。1kWhあたり9.5ペンスという支払い額は、かなり風況の悪いドイツの立地で支払われる額よりもはるかに高いものとなっています。たしかに、ドイツの風力発電全体の平均設備利用率はスコットランドにあるこの風力発電所のちょうど半分の18パーセント程度なのですが。
オンラインで入手できる冊子(このPDFも参照)から判断する限りでは、このプロジェクトは現時点ではそれほど大幅に支払われすぎているわけではありません。この超過利益がどこへ行っているのかはわかりませんが、コミュニティに届いてないことは明らかです。おそらくシステム全体の至る所で消えてしまっているのでしょう。
元記事:Renewables International, “New community wind farm in UK is largest ever”(2015年5月18日)ISEPによる翻訳