BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンはグリーン交通革命での奮闘を誓う

2016年12月26日

自動車の生まれ故郷ドイツの象徴とも言うべき自動車メーカー、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンの3社はグリーン交通の未来を創造するモビリティ革命という史上最大の課題に直面しています。ヨーロッパ最大の自動車メーカーフォルクスワーゲンによる排気ガスの試験結果改ざん不祥事による失墜や、グーグルやテスラ、アップル、ウーバーなどの新しい強力な競争相手との対峙により、脱炭素や自動運転、カーシェアリングの時代におけるドイツの馬力を誇る自動車メーカーの未来はかつてないほど不確実になっています。しかし、専門家達はモビリティの未来を制する世界的レースから自動車イノベーションの原動力となる大手企業を除外するのはまだ早いと警告しています。

ドイツの自動車メーカーが直面するモビリティ革命

もし第2次世界大戦後のドイツの経済大国への台頭や現在の輸出力を象徴する製品を1つ挙げるならば、それはメルセデスベンツ、BMW、ポルシェまたはアウディが製造する高級車でしょう。「ドイツ製」の自動車は信頼性と世界品質を証明するものと考えられています。自動車を発明したことを誇りに思い、高速道路でのスピード制限に今も抵抗する国であるドイツの自動車業界の運命は、よく国全体の経済的繁栄のバロメーターとして見なされます。

しかし、「ディーゼルゲート」とも呼ばれるフォルクスワーゲンの排ガス不祥事は、ドイツ自動車メーカーによるグローバルな技術的リーダーシップへの主張に大打撃を与えました。そのタイミングはこれ以上ないぐらい最悪でした。電気エンジン、自動運転車、カーシェアリングといった「モビリティ・メガトレンド」が生み出す危機的事態に企業は直面しているのです。

「ドイツの自動車業界が目下の構造変化の勝者として台頭することに賭ける人はいるでしょうか?今のところこの競争は誰でも参加できる状態であり、自動車メーカーは何が危機的なのか気づきはじめています。」新しいモビリティシンクタンクAgora Verkehrswende[1]のトップであるクリスティアン・ホッフフェルド氏は、このように述べ、「排ガス不祥事は自動車メーカーのグローバルな信頼にとって最悪なケースのシナリオであり、そのうちドイツに限った問題ではなくなります。」と語っています。

この騒動により、焦点は「ドイツの自動車メーカーはどこまで従来型エンジンにしがみつくのか?」という疑問に絞り込まれました。自動車関連企業に驚異的な利益をもたらすビジネスモデルは依然としてあるものの、輸送部門が化石燃料から脱却するのであれば、今後数十年のうちに消滅の危機にさらされることになります。

ドイツがパリ気候協定による地球温暖化を防止する誓約を守るため、これから数十年内で排出量を事実上ゼロに削減しなければならないということを疑う余地はありません。排出量の削減は25年間、排出量がほぼ変わらなかった運輸部門を含めたすべての部門で実施されなければなりません。(Clean Energy Wireの調査書類 “The energy transition and Germany’s transport sector” は、現在のように乗用車に焦点を合わせるのではなく、全部門の概要を提供しています)

ハンドルを握ったまま居眠りをしていた多くの自動車メーカーの管理職は前途に待ち受ける挑戦に対して目を覚ます必要がある、という警告の声が「ディーゼルゲート」によって業界関係者やモビリティ専門家、政治家の間で高まることになったのは驚くことではありません。

しかし、この危機はドイツの自動車メーカーにとって大音量の目覚ましにもなりました。BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンはグーグル、アップル、テスラ、ウーバーといった強力で新たな競争相手と戦い、グローバルリーダーとしての地位を守ろうとしています。

ドイツのグリーンな未来へのシフトは、急速に台頭する再エネ電力への適応に古い電力会社がついてゆけていないエネルギー業界で、すでに大混乱を引き起こしています。E.ONRWEは変化を受け入れる代わりに抵抗したことにより、存続の危機にさらされました。

ドイツのエネルギー転換が運輸部門にも影響を及ぼすようになるにつれ、古い電力会社の運命は自動車メーカーへの警告となっています。自動車部門の規模の巨大さを考えると、国全体がより多くの危機にさらされることになります。

自動車業界はドイツの経済でまさしく巨人であり、公式の統計データによると1,300社で80万人以上の従業員が働いています。その売上高は、製造部門最大であり、2015年には4,000億ユーロを記録しています。

電動の自動運転車に特徴付けられる未来のモビリティの世界で、これまでを象徴する企業群が君臨し続けることができるか、という疑問は大きくそびえ立っています。

ドイツ電気モビリティプラットフォーム(NPE)会長であるヘニン・カーガマン氏は「問題の核心はもはや我々が新しいモビリティ時代に入ったかどうかではなく、ドイツがそこでどのような役割を果たすかということだ」と語っています。

フォルクスワーゲン、BMW、メルセデスベンツのロゴ
フォルクスワーゲン、BMW、メルセデスベンツのロゴ

3つのメガトレンドにおける挑戦

ほとんどのモビリティ専門家は、伝統的な自動車メーカーが受ける影響を心配しているものの、より厳しい環境規制、全自動運転技術、共有経済という相互に関連する3つの「メガトレンド」がこれから先の数年間に業界のかたちを変えることを認めています。

まず、より厳しい環境規制は結果として燃焼式エンジンから電気推進へのシフトを業界に強制することになります。ドイツ連邦環境庁は全体の「輸送部門は2050年までに実効性をもって温室効果ガス中立にしなければならない」と語っています。

自動車メーカーの伝統的強みである強力な燃焼式エンジン、変速装置などは電動エンジンの到来により価値がなくなる可能性が十分にあります。

「電動エンジンは非常に少ない部品しか必要としません。燃焼式エンジンは非常に複雑になりましたが、それはすべて将来必要なくなります。」と自動車管理センター(CAM)の自動車の専門家 ステファン・ブラッツェル氏は述べます。「部品が少ないということは、人も少ないということです。雇用は少なくとも5分の1にまで減るでしょう。それは自動車メーカーにとってだけではなく、サプライヤーにとても問題です。1万人の雇用が危機的な状態に陥るかもしれません。」

2つめのメガトレンドは自律運転技術です。これは新型車で段階的に現れていくでしょう。完全な自動運転車で最終的にどのような結果となるのか、専門家の意見は大きく分かれています。

ドイツ自動車メーカーが抱える伝統的誇りが将来どのような価値をもつのか、これがイノベーションにより改めて問われています。専門家によると、自律運転は事故のリスクを大幅にカットし、それによって大きな車体と安全機能の必要性も減少します。さらに、自動運転車は大量のデータを生成するため、データ管理とIT接続がより極めて重要になるでしょう。これもまた老舗企業の強みではありません。

自動運転車の最終的な影響は、技術の問題を大きく超えることになるでしょう。自動車旅行は車の運転以外に時間を使えるようになるため、モビリティ・ライフスタイルのかたちが変わり、それは潜在的に産業にも深い悪影響を与えるでしょう。自動車の専門家であり、ビジネスコンサルティング企業マッキンゼーのパートナーであるニコライ・ミュラー氏は「このステップは、自動車とは本来何であるのか、という問いに大きな影響を与えるでしょう」と述べています。

3つ目のメガトレンドは共有経済の台頭とそれが運輸部門に与える影響です。これはカーシェアの構想が世界中の都市で急速に出現しており、すでに進行しています。これらのサービスは、自分で車を持たずに間に合う人々の割合が増える可能性を生み、ライフスタイルを大きくシフトする先駆けとなるかもしれません。その結果として、一流のステータスシンボルとしての自動車の意味は低下し、潜在的に自動車の販売台数を減らしています。

コンサルティング企業アリックス・パートナーズによると、この3つのチャレンジは業界が「大きな分岐点」にぶつかっていることを意味しています。「これからの数年にわたり、自動車産業はヘンリー・フォード以降でもっとも大きな激動に直面するでしょう。」

パリの自動車ショーで電気自動車EQを紹介するダイムラーCEO のディーター・ゼッチェ氏. Photo: © Daimler presentation.
パリの自動車ショーで電気自動車EQを紹介するダイムラーCEO のディーター・ゼッチェ氏. Photo: © Daimler presentation.

New kids on the block:アップル、グーグル、ウーバー、テスラ

この業界での大変動は、新しいプレーヤーが巨大な市場を制覇するまたとないチャンスを楽しんでいるということを意味しています。

まず、電気自動車は作るのが非常に簡単なため、新参者でもすぐにチャンスをつかむことができます。この脅威は、米国や他の市場で2015年にテスラの電気自動車Model Sの販売台数がダイムラーの高級車S-Classを上回ったことにはっきりと例証されています。

同じことが自律運転にもあてはまります。ケルン経済研究所の調査によると「自動運転の進歩は、新参者が進歩の初期段階を飛び越し(またはサプライヤーから獲得し)、破壊的な方法で競争環境を変えることを可能にし、その核心は自動車メーカーが電気部品を買収するか、デジタル企業が自動車を買収するかという問題になります」と述べられています。

モビリティ専門家のホッフフェルド氏はグーグルやアップルのような巨大インターネット企業が、中国のiPhone製造企業フォックスコンのように、自動車メーカーとその主なサプライヤーを単純なハードウェアサプライヤーに分解し、独自の自動車を作る可能性さえ見込んでいます。「自動車部門で、アップルや他社にとってのフォックスコンになることは、ドイツの自動車メーカーにとってまさに悪夢となるでしょう」

ウーバーの例は、ライドシェアやカーシェアといった潮流が自動車産業に新たな競争機会をつくり出すことを示しており、しかも、その新しく強力な競合相手はハードウェアを扱ったことさえありません。「投資家たちは、基本的には新しく需要と供給をつなぐだけのアプリに数十億ドルを注ぎ込んでいるのです」とホッフフェルド氏は述べます。

マッキンゼーのミュラー氏は、この進展がドイツの自動車メーカーにとって深刻な問題をもたらすかもしれないと警告しています「共有モビリティの巨大企業が大量の車を注文する進化を想像してみてください。自動車メーカーと現在のエンドユーザーの間に仲介者が現れることになるでしょう。」

モビリティ革命は、伝統的な自動車メーカーの成功の基礎となっている考え方、つまり、個人が車を所有することや車種の差別化をはかるといったことに疑問を投げかける新たなビジネス分野を創出します。

この業界は、過去に漸進的な変化によって特徴づけられてきました。しかし、メガトレンドによって引き起こされる転換は将来破壊的な変化をもたらす可能性があります。ドイツの自動車メーカー3社が勝利を収めるのか、迫りくる創造的破壊の犠牲者となるのか、まだはっきりとはわかりません。

彼らは、新しいプレーヤーによる挑戦を甘く見ているわけではありません。「我々はすべての競争相手を非常に厳しく受け止めている」とフォルクスワーゲンの広報担当ティム・フロンツェック氏はClean Energy Wireに語っています。しかし、政治家が自動車メーカーの未来に対してより深い懸念を抱くかどうかは多少疑問があります。

ドイツ運輸大臣アレクサンダー・ドーブント氏は「今、我々が経験している変化を前提とすると、現在のトップ自動車メーカーが10年後もトップの製造者でいられるかどうかはわからない」と警告しています。

欧州委員会副会長のマロウシュ・シェフチョビッチ氏も自動車業界を「いよいよ先に進む」ように促しています。同氏はDie Welt紙で「燃焼型エンジンではヨーロッパの自動車業界がトップだったが、代替運転に関しては遅れをとっている」と語っています。

対抗戦略 − 現状を維持するロビー活動

つい最近まで、新たな課題に対処する戦略のひとつとして、自動車メーカーたちは伝統的燃焼型エンジンのビジネスモデルを遮ろうとする変化に抵抗し、存続期間をできるだけ長く延ばそうと画策してきました。

例えば、企業はその強い政治的影響力を利用して2013年EUレベルの厳しい排ガス規制を阻んでいました。これは南ドイツ新聞が政府の内部文書を暴露したことで明らかになったように、儲け仕事の主力である強力な燃焼型エンジンを売り続けるということでした。

ヨーロッパの国際クリーン交通委員会(ICCT)の代表取締役社長であるピーター・モック氏は「自動車メーカーがロビー活動戦略を続けることは過去にもしばしばありました。“新しい目標は野心的すぎて達成できない”と言って、単に先送りにし、技術的に実現可能であることの証明を後回しにしていました」とClean Energy Wireに述べています。

皮肉にも、政策立案者へのアピールを含め、彼らの古いやり方を続ける理由に将来のチャレンジを引き合いに出すことがしばしばあります。ホッフフェルド氏は「業界では、新しい駆動技術の研究開発費を調達するため、強力なエンジンを搭載したプレミアムセグメントの車種を売り、高いマージンを稼ぐ必要がある、という主張を聞くことがあります」と言っています。

こうした嘆願は政治家の間にも反響しています。あるeモビリティの会議で、運輸地方担当大臣ライナー・ボンバ氏は「eモビリティには巨額の投資が必要であり、それをディーゼルとガソリンエンジンで稼がなければならない。それが今でもエンジンを廃止できない理由です」と述べていました。

自動車メーカーの3社は、従来型自動車を販売する伝統的ビジネスが大きな成功を収めてきたことにより、多くのものを失うことになります。

BMWは、92億ユーロの税引き前利益を記録した2015年に、10年以内で倍となる951億円の売上を達成しました。ダイムラーは、昨年だけで純利益を19パーセント増の87億ユーロ、売上を15パーセント増の1495億ユーロまで押し上げました。フォルクスワーゲングループは、15パーセント増の2130億ユーロに売上を伸ばしましたが、排気ガスの不祥事で昨年は赤字に転落しました。2014年は111億ユーロの利益を記録しました。

しかし、ホッフフェルド氏は長期的には現状を維持するロビー活動が自分自身の首を絞めることになると警告しています。「ドイツとヨーロッパの自動車業界によるロビー活動の成功は目下の変革の最大の障害となるでしょう」

パリ自動車ショーで電気自動車I.D.を紹介するフォルクスワーゲンのトップHerbert Diess氏. Photo: © VW presentation
パリ自動車ショーで電気自動車I.D.を紹介するフォルクスワーゲンのトップHerbert Diess氏. Photo: © VW presentation

ディーゼルエンジン − 自動車メーカーにとっての「恩恵と悩みの種」

排気ガスの不祥事以降、交通の未来に関する議論でディーゼルエンジンの運命は特に焦点となってきました。

自動車製造業は、ディーゼルエンジンがガソリン自動車よりも気候フットプリントが良いこと、従来型のエンジンは一般的にまだ排気ガスを削減する余地があることを強調する傾向にあります。

ドイツの自動車メーカー協会VDAの会長であるマティアス・ヴィスマン氏は、「ガソリンとディーゼルはまだ大いにポテンシャルがあります。我々は数年以内に従来型のエンジン効率を少なくとも10~15パーセントの改善することができると予想しています」と述べています。

彼はまた、業界では「実質的に気候ニュートラル」な合成燃料を研究しており、「そのような燃料を使ってディーゼルやガソリン自動車は長い寿命を保つことができる」と付け加えています。

しかし、業界の専門家であるブラッツェル氏は、この戦略はそう長く続くことが約束されていないと警告しています。「車両を電動化しない限り、自動車メーカーはより厳しくなる排ガス規制に適合することはできなくなります」

モック氏は、ディーゼルエンジンによる利益が大きかった分、そこへの依存は特にドイツの自動車メーカーにとって問題となると述べます。「それは業界にとって恩恵であり、悩みの種でもあります。ドイツの発展の典型であり、これまで自動車メーカーに多くの成功を生み出しました。しかし、十分な排気ガス削減を行うには長期的にはコスト効率が悪いため、今では問題となっています。」

排気ガスの不正問題の後、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンでは「抜本的な見直しが進んでいる」とモック氏は考えています。彼はさらに「不祥事が起こったことで物事が動き出し、自動車メーカーはこの旅路の行方を考え直すことになりました。彼らはディーゼルがまだ古びることのない技術なのか、新世代のエンジン開発に資金を投じる価値はあるのか、それともそのお金は違うものに費やした方が良いのではないか、と考えるようになりました。これこそが現在の大きな問いです。」

自動車メーカーは、従来型エンジンは世界的に浸透していることから、今後も長くビジネスの重要な柱であり続けると強調しています。「たとえ代替エンジンの売上が中国、アメリカ、ヨーロッパのような地域で徐々に加速していっても、従来型エンジンを別の理由から必要とする他の地域があるでしょう」とフォルクスワーゲンのフロンツェック氏は述べます。

ダイムラーの広報担当者マドレーヌ・ヘルドリッチカ氏は「一晩ですべてを電動化することは不可能です。世の中にはさまざまな市場があり、全部がドイツやカルフォルニアのように変わるわけではありません」と認めています。しかし、それと同時に彼女は「私達は次世代モビリティの出発点にいて、どこに向かっているかは誰の目にも明らかです。」と付け加えています。

一貫した戦略に欠く分割統治

フォルクスワーゲンの排気ガス操作は、多くのドイツの政治家にとっても目を覚ますきっかけとなりました。ドイツの巨大な自動車企業は、持続可能なモビリティという点では遅れているということに気付いたのです。

3大企業すべてがすでに電気自動車やカーシェアリング等の新しいモビリティビジネスの領域に足を踏み込んでいます。しかし、そのビジネスは従来型自動車の売上に比べると依然として非常に小さいままです。

国際的なスケールで見ると、変化は速く訪れるかもしれません。電気自動車の世界シェアは現在1パーセント以下です。しかし、その流れは急に変わるという予測がいくつかあります。

2030年の時点で新車の半分が少なくとも部分的に電気自動車になるとマッキンゼーは予測しています。2040年までに新車の売り上げの3分の1から2分の1が電気自動車になるとBloomberg New Energy Financeは予測しています。

ドイツでの進捗はゆっくりとしたものです。2020年までに100万台の電気自動車を走らせること目標として維持することを政府に期待する人はほんのわずかでした。2016年前半にたった25,502台しか国内で登録されていませんでした(詳細はClean Energy Wireの調査書類The energy transition and Germany’s transport sectorとファクトシートEnergiewende in transportation: Vague goals, modest stridesを参照)。

eモビリティに弾みをつけるため、2016年の春にドイツ政府は4,000ユーロを上限とする購入者プレミアムを導入しました。しかし、これまでのところ、このインセンティブは「大失敗」となっています。専門家によると、インセンティブ自体が小さい上、充電インフラが十分になく、電気自動車があまり魅力的でないことがその理由です。

業界専門家が確認したプレスの報告によると、自動車業界は政府が計画していたもっと野心的な購入者プレミアムを阻止するロビー活動をしていたのです。元々のインセンティブは自動車メーカーに電気自動車の割り当てがあった上、大きさに応じて燃焼型エンジンに対する課税を含めるはずでした。しかし、「大きな自動車を悪者にする」と見なす戦いでは、自動車のロビー活動が勝利したのでした。

評論家たちは、政府に再エネモビリティに関する首尾一貫した戦略がないことが進行の遅れになっていると述べています。これは政府自身がこの件に関して完全にタテ割りになっていることが理由のひとつだと批判しています。環境省は都市部でのディーゼルの禁止の例にもある通り、再エネモビリティを前進させたいにもかかわらず、運輸省は業界ときわめて近い関係にあることが広く知られており、変化の妨げとなっています。

また、運輸省の「交通インフラ計画2030」では、再エネモビリティを重視するというより、予算の大部分を道路建設に充てていることから、この問題へ注目が高まっています。

しかし、排気ガスの不祥事を受けて政治の優先順位は変わりはじめたと、モック氏は確信しています。「政治家は、何が自動車業界にとっての本当の利益になるのか、短期的には守るべきなのか、長期的観点から楽な立場を与えない方がいいのか、などと考えはじめています」

フォルクスワーゲンは、ドイツのeモビリティに関する政策が理想からかけ離れていることを認めています。「ノルウェーの例を見れば、全てのレベルに応じて支援を行うことで、いかにeモビリティが急速に発展するかが分かります」と、フロンツェック氏は述べます。

カーシェアリング車両DriveNowの電気自動車BMWi3. Photo: © DriveNow
カーシェアリング車両DriveNowの電気自動車BMWi3. Photo: © DriveNow

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