国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、コスト削減に成功した多様な自然エネルギー技術についての新たな調査報告書を公表しました。本日は太陽光発電についての3つのグラフを紹介します。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発行する「REthinking Energy 2014」レポートでは、基本的に2020年までに自然エネルギーのコストは低下し続けていくという、非常に有用な全体像が提示されています。太陽光発電については、特に興味深いグラフがいくつか示されました。
太陽光発電システムの普及コスト予測(2010〜2020年)
このグラフによると、太陽光発電システム導入の価格は現在から2020年までの間にさらに約5分の1低下する見込みです(今後を表す年度には推定(estimates)を示すeを付けた「2015e」といったかたちで表示することが望ましいのですが)。太陽光パネルそのものの価格は今後も下がり続ける見込みで、これは基本的に「ソフトコスト」である「その他(other)」の低下によるものです。私が2年前に解説したように、このコスト項目は国毎の太陽光発電の価格差を説明する上で重要な要素となるのですが、それについてはまた後述します。
その他に調査結果で際立っていたのは、コスト構成全体の中で見ればごく小さな割合ではあるものの、2010年から2012年にかけて太陽光パネルの価格が約60%低下し、2010年から2013年にかけてインバーターの価格も同様に約半分になっていたということです。総合的に見れば、太陽光発電設備の価格は2010年から2012年にかけて約40%低下しています。
ここで、説明がなされていない2つの逆向きの動きがおきています。第一に、2010年から2011年にかけて「その他(other)」の項目が著しく上昇していました。第二に、「EPC(Engineering, Procurement and Construction)」は2011年当時と比較すると現在の方がコスト全体の中で占める割合が多くなっています。後者については前向きな兆しとも考えられるでしょう。つまり、これは労働に対して十分な対価が支払われていることを示しているのです。太陽光発電が良好な雇用を促進していると言い換えることもできます。
次に、ソフトコストによる差を示した別のグラフを見てみましょう。ドイツと米国の太陽光発電設備の価格を比較すると、太陽電池モジュール以外のBOS(Balance of system)の価格が、米国ではドイツの2倍となっている一方、太陽光パネルの価格はほぼ同額です。この結果はこれまでの報告書と一致しています。
ドイツと米国の家庭用太陽光発電のコスト内訳
最後に、ドイツの固定価格買取制度で設定された価格に対する自然エネルギー設備コストのグラフです。繰り返しになりますが、私たちにはおよそ2009〜2011年ごろから6%の目標設定をはるかに超えることが可能であったという確証がありました。太陽光発電の買取価格の引き下げは必須でした。おかげで、もはやドイツでは新規の太陽光発電設備はほとんど利益を得ることが難しくなり、実際2013年のはじめ以降はそうなっています。昨年の調査結果は少し予想外ですが、それでもまだ3.8GWの設置量がありました。このデータはさらに低迷する2014年の市場を解明する材料となっています。
ドイツの固定価格買取制度と設備投資コスト(10kW以下のシステム)(2006〜2013年)
最後のグラフが10kW以下のシステムを対象としている一方で、その他のグラフでは、異なるサイズのシステムをひとまとめにしています。全体を単純化するのに有用ですが、実際の太陽光発電には小規模な屋上設置型から大規模な陸上設置型システムにいたるまで大幅な価格差があります。
域内調達要件を視野に入れて上述の項目別分類がおこなわれることがあり、これを追加する価値はあります。太陽光パネル自体が輸入品であっても国内で付加価値をつけることは可能であると言えるかもしれません。先進国、新興国、開発途上国を同様に代表するIRENAのような国際機関は慎重な姿勢を強め、域内調達要件は一時的な仕組みとしては機能すると主張しています。しかし、グローバル産業としての太陽光発電の重要性を忘れてはいけません:「初期段階の産業の発展を本格的なものにする上で、域内調達要件は時限的なものとし、実践しながら学ぶプロセスとしっかり結びつけながら、熟練労働者が国際的に競争力のある国内産業を創り出していくことを支えるものとして機能するべきです。」
(クレイグ・モリス)
元記事:Renewables International, ”Solar keeps getting cheaper”(2014年9月13日掲載)著者許諾のもとISEPによる翻訳